17日デンプシー統合参謀本部議長は、統合の対拒否戦略作戦コンセプト(JOAC:Joint Operational Access Concept)を公開し、議長のブログにコメントを掲載しました。
このコンセプトは、5日に発表された新国防戦略を基礎としたもので、26日に発表される(2月6日は誤りでした)2013年度予算案の基礎となるコンセプトと思われます。
一方でこの実質64ページの文書は、極めて堅いお役所文書で、修飾語や関係代名詞が入り組んだ眠気を誘うモノでもあります。従って、以下をご覧頂いて、おおよその脅威認識と対処の方向を掴んでいただければそれでOKかとも思います(独断ですが・・・。又はサマリーだけ目を通すか)
「1/2米中衝突シナリオを基礎に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-12-28
「2/2米中衝突シナリオを基礎に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-12-28-1
「補足米中衝突シナリオを基礎に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-12-28-2
「CSBA中国対処構想」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-18
「前半:サイバーと宇宙演習の教訓」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-02-01
「後半:サイバーと宇宙演習の教訓」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-02-02
印象に残ったのは、接近拒否(Anti-access)と領域拒否(Area denial)の概念の違いを明確にして対A2AD議論を進めていることです。
また文章の中で、同コンセプトの実行にはリスク(特に兵站と財政面)が伴うことを明確に謳い、デンプシー議長も「明確な戦略的挑戦に直面」との危機感溢れる表現を交えて説明している点も印象に残りました。
更に言えば、文書の最終部分に対拒否戦略コンセプト推進の原則事項12条と30の分野別必要能力を列挙し、組織内への徹底浸透を促進しようとの姿勢も感じられます。
1.5MBのJOAC文書は
→http://www.defense.gov/pubs/pdfs/JOAC_Jan%202012_Signed.pdf
米国防省HPの説明記事によれば・・
●このコンセプトは、A2ADを行使する武装した国家や非国家の敵に対処する方針事項を示すモノである。A2ADは必ずしも新たな概念ではないが、今日の作戦環境の特徴を踏まえて作成したものである
●4軍が、適時適切に必要とされる地域へのアクセスを確保することは、いまだかつて無いほど難しく成りつつある。本コンセプトの推進に当たり、4軍は個々にそして共に努力して実行すべき
●目まぐるしく変化する戦況の中で、チャンスを素早く掴んで敵システムを破砕するには、前線レベルで陸海空宇宙サイバーの各ドメインを横断するシナジー効果発揮が益々重要になる。
●特に、従来からの陸海空ドメインと、宇宙とサイバー空間の柔軟で深い融合をコンセプトは求めている。
●接近拒否(Anti-access)は、より遠方で、主に海空戦力により、敵対戦力が活動エリアに入るのを防ぐ事を狙った脅威である。具体的な脅威の例は・・・
— ballistic and cruise missiles
— long-range reconnaissance and surveillance systems
— anti-satellite weapons
— submarines
— cyber and terrorist attacks
— special operations forces
●領域拒否(Area denial)は、より近い地域で、短射程行動や能力により、敵対戦力の活動を制約することを狙う脅威である。具体的な脅威の例は・・・
— air forces and air defense systems
— short-range missiles and submarine-based torpedoes
— precision-guided rockets, artillery, missiles and mortars
— chemical and biological weapons
— computer and electronic attacks
— land- and sea-based mines
— unmanned surveillance or weapons systems
— land forces; and special operations forces.
●これらA2AD脅威に対処するために・・・
—事前に作戦地域で準備を整え
—機動展開や作戦により先手を取り、一つのドメインでの優位確保を、他ドメインでの敵戦力の破壊破砕に導く
—敵に攻撃を加える間にも、我の宇宙やサイバー空間アセットを防護する
●原則事項12条と30の分野別必要能力については、ご興味のある方は原文をご覧下さい
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冒頭で触れたように、1月26日に2013年度予算案の概要説明が行われるようです。通例2月第1月曜だったのですが、前倒しになったようです。Winnefeld統合参謀副議長が19日に明らかにしました。
国防省レベルの戦略と統合レベルの作戦コンセプトが一応揃い、「戦略に基づく」予算削減の形は出来ました。これら上位概念を基礎に、2013年度予算は、予算削減10年計画の前半部分を占うモノとなります。
「次期爆撃機に有人型は不要」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-07-16-1
「序論:長距離攻撃システム構想」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-25
「本論1:長距離攻撃システム構想」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-26
「本論2:長距離攻撃システム構想」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-26-1