(被害者に対し、)ベストな支援を物心両面で提供し、同様な事案が他に起こらないようあらゆる手段を講じる
18日、パネッタ国防長官は「性的暴力(Sexual assault)」への対処策強化について会見を行いました。先日の記事で、空軍女性兵士の「5人に一人」が被害者であるとの衝撃の調査結果をご紹介しましたが、国防省全体も似たような状況にあるようです。
会見では、昨年の被害届は約3200件であるが、潜在的には約19000件の被害があるとの見積もりが語られており、在職女性の「5人に一人」との話が現実に重くのし掛かっているようです。今後数ヶ月で追加の対策や立法措置が必要な施策を推進し、兵士の配偶者や子女への支援も行うとしており、問題や被害の根深さを伺わせます。
パネッタ長官は問題の難しさを・・
●性的暴力は、司法機関にとって一般社会においても対応が難しい犯罪である。この犯罪の被害者は、訴えることをためらう。同僚からの目を気にしたり、自身の人事管理への影響を恐れたりして被害届を出さないのだ
●国防省のリーダー達は、被害届が出しやすいように部隊や兵士の考え方を変えていかなければならない。そのためには指揮官達の本問題への意識を変えなければならない
●被害の訴えに基づき訴追件数が増えれば、組織の中に問題意識が高まるはずだ。捜査に当たるモノも積極的になって欲しい。そして被害者が適切に扱われるようにして欲しい。
パネッタ長官は4つの施策として
●1つ目、被害者がベストなケアを受けられるように、各部隊や機関の担当部署や担当者に適切な国家資格を取得させるようする。又は有資格者を配置する
●2つ目、被害者へのサポート態勢を、配偶者や子女にも新たに拡大。また海外勤務や戦闘地域の国防省シビリアン職員や契約業者職員にも緊急対応支援や相談窓口を提供する
●3つ目、事案の調査官や軍の法律関係者に所望の教育訓練を施す予算の計上。更に事案のデータベースを本年末までに整備
●4つ目、前線で防止策にあたる士官や上級下士官への教育プログラムを120日でまとめさせる
本件については昨年12月末に、2つの基本対処指針が示されていたようです。
●1つ目。被害報告には2種類、通常被害報告と流通制限報告(restricted report)を設ける。
—通常報告を提出すると、被害者はオプションで部隊から移動し、加害者から離れる要望が出せる。直属上司は72時間以内に返答が求められる。直属上司が認めない場合、上級部隊等の窓口に訴えると、72時間以内に上級部隊も対応を決定しなければならない。
—流通制限報告の場合、医療的措置やカウンセリングを受けることが出来るが、上司等へは通知されない
(写真の女性は、国防省担当室長のヘルツォーグ少将)
●2つ目。通常報告は50年間保管され、被害者が退役後に必要な措置を退役軍人省を通じて執る際に活用できる。制限報告は5年間保管する。
最後にパネッタ長官は被害者に向け・
●私は、このような犯罪が米軍内にあることを深い悲しみを感じている。私はこのような犯罪を防止を引き続き最優先課題とし、全力で取り組む。
●私には皆さんに必要な物心両面の支援を提供する事を約束するとともに、皆さんに起こったことが他で起こらないよう、あらゆる施策を講ずる。
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年間に約19000件・・・
被害者への対応と同時に、グレーなケース(同意が有りか無しかで意見の対立)への対応とその労力を考えると、部隊指揮官にとっては大変な仕事です。
以前の記事では、被害発生率は米一般社会と同レベルらしいので、日本でも同様の事象があるのかも知れません。「対岸の火事」であることを祈るばかりです
しかし、パネッタ長官が自らが登場しての記者会見。事の重大性と士気や兵士募集への影響を考慮すれば、「同性愛者の入隊」以上に大きな課題です。
「米空軍は5人に一人」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-01-10