昨年12月30日、昨年最後の「伊藤洋一のRound Up World Now」が中国特集を放送し、お馴染みの富士通総研主席研究員の柯隆さんが登場しました。
伊藤洋一氏との対談形式で行われる恒例の中国特集ですが、今回は年末に合わせ、2011年の中国を振り返り将来を展望する内容となっています。冒頭、北朝鮮の話もありましたが、中国関連の話題の概要をご紹介します。
10月の習近平への政権交代
●習近平への移行は既定路線で、司法関連など一部のポストは既にそれを見据えた交代が開始されている。
●しかし首相人事は予断を許さない。李克強が大本命であることに変わりはないが、王岐山の可能性は決して排除されていない
●いずれにしても、国内の難しい問題が山積していおり、次期首相の八年間は極めて困難な任期となろう。
漁船不法操業と韓国人殺害
●今回の事件で明らかになったのは、中国当局の人命に対する配慮のなさ。外交的な問題に関して人命が失われているのに、全く他人事のような初期の対応が如実に示している。
●もちろん国内世論への配慮もあろうが、背景には韓国人に対する特別な感情もあるようだ
●日中戦争時、日本軍と行動を共にした韓国人傭兵の「残忍さ」「横暴さ」は根強く中国国内で語り継がれているようで、今回の韓国との問題を大きくした原因の一つ。ネット上の書き込みは圧倒的に対韓国強硬論であった。
ネット情報の影響力
●中国のネットでは、当局により政権への批判やデモ・ストライキの扇動はチェックされ、ブラックリストが作成されているが、名指しでなければ削除されない場合がほとんど。
●中国のミニブログ利用者の数は3億人を突破。短期的に「アラブの春」のようなことは起こりえないが、長期的には政権への批判を盛り上げるトレンドに寄与する可能性がある。
温家宝の経済運営
●2011年の後半、引き締め政策が効き過ぎて経済の減速傾向が強まったのは、統計の改竄が自らの首を絞めた皮肉な結果である
●2011年2月、インフレを隠すため、中国は値上がりが続いていた食料品の換算率を引き下げて統計数字を操作した。しかしその結果インフレの実態を正しく把握できず、結果的に経済を引き締めすぎたのである。
●国家財政は直接税と各種罰金によって成り立つ変則的な状態で、人々の納税意識は低いが当面大きな問題はない
●問題は地方財政である。非効率な地方政府が運営する第三セクター事業は業績が極端に悪いモノがあり、発覚時点で地方政府全体が手の施しようもない破綻状態に至っているケースが今後出てくるだろう。
不動産価格
●低価格帯と高価格帯の不動産価格はそれほど変わっていない。一方で中価格帯の不動産価格の低下が大きい
●これは所得の格差傾向が一段と進み、中間層が景気減速傾向の影響をもろに受け、また中間層の数が減少傾向にあるためと考えられている。
●政府の文書にも、中間層の育成が政策課題に取り上げられるようになっている。
地場産業・中小企業
●5年前と比較し、地場産業・中小企業の生産高は6割増になっている。小松製作所から技術移転を受けた企業が、ドイツでパテントを獲得する例が見られるようになってきた
●しかし素材産業が育っていない。多くのレアメタルを有してるが、それを生かすような企業がない。
●日本の中小企業に中国関係者を案内すると驚嘆の眼差しを向けるが、その日本の中小企業が資金繰りに苦労している状況は、逆に日本にインキュベーターが不足している現状を示すモノであろう。
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柯隆さんと伊藤洋一氏との対談を、継続して4回ほどご紹介してきましたが、危ない危ないと言われながら何とか生き延びているのが中国経済です。
10月の国家主席交代を、中国はどのような形で迎えるのでしょうか。
「バイデン訪中と密約」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-09-12
「中国インフレの混乱と処方箋」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-06-27
「中国バブル崩壊は秒読み」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-01-06
「中国経済は下り坂」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-01-30