(補足)米中衝突シナリオを基礎に

ASBM DF-21D.jpg昨日まで2回にわたり米国防政策の背景にある「米中衝突シナリオ」を概観しました。
本日は補足として、このシナリオがどのように具体的政策に反映されつつあるのか、少し振り返ってみたいと思います。
「1/2米中衝突シナリオを基礎に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-12-28
「2/2米中衝突シナリオを基礎に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-12-28-1
ところで、そもそもシナリオの元は民間シンクタンクCSBAのレポートですが、政府系のシンクタンクであるRAND研究所も同様な認識を元にした中国軍に関するレポートを発表しています
「RANDが中国軍戦略を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-03-29
「RANDレポート:中国との紛争」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-10-20-1
また、わざわざ複数のシンクタンクのレポートを紐解かなくても、2010年のQDRは接近拒否・領域拒否戦略への対処のため、8つの項目を掲げており、これらは全て2回にわたってご紹介した「衝突シナリオ」を念頭に作成されたことが自明です。
「QDRの対中国対処構想」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-02-05
「QDRで日本は何を読み取るべき」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-02-07
2010年2月に発表されたQDRは、同年2月末には日本側関係者に説明され、日米共同での対処を求められています。そして2010年末、「防衛計画の大綱」が米国の意向を汲んだ「振りをして」制定されています。
2011年12月末に緩和された「武器輸出3原則」に関しても、国内産業からの要望の他に、既にこの時点で米国から求められていたモノでしょう
「QDRで日本側に迫る」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-06-02-1
「新防衛大綱とAir-Sea Battle」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-12-19
「防衛白書官僚の心情代弁」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-08-03-1
SouthChinaSea.jpg米国と西太平洋地域の国々との関係強化も、「米中衝突シナリオ」からくる極東同盟国の脆弱性を反映しています。
豪との同盟強化はその典型で、対立ポイントである南シナ海に近いとの理由はあれ、中国に近く脆弱な日本やグアムから離れた場所に拠点を確保する狙いが明らかです。海兵隊2500人の拠点設置にしろ、海空軍の訓練達より増加にしてもです。
また、インドネシアやベトナム等、これまで歴史的経緯や人権問題から疎遠だった東南アジア諸国との関係改善傾向も顕著です
「米海軍は日本から豪へ移動」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-07-29-2
「Toshi Yoshihara博士の来日」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-09-29
「インドネシアと関係強化」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-07-23
「マレーシアと関係強化」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-11-10
「ASEAN Plusに参加」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-11
これらの関係改善努力の背景を分かりやすく説明してくれるのが、CSBA副理事長の提言です
「中国の南シナ海進出対応」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-02-07
CSBA LRS3-2.jpg米軍の兵器開発や調達面では、「米中衝突シナリオ」を念頭に、厳しい予算状況にあっても、長距離攻撃能力(爆撃機とPGS)、ISR能力、無人機(空中、水中)開発のを重視することが、関係者から語られています。
「脅威の見方を変えよ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-06-09
「どんな兵器Anti-Access対応」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-03-04
「序論長距離攻撃システム構想」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-25
「米無人機の再勉強」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-09-05
「米海軍航空戦力の将来後編」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2009-12-27
「なぜアフガンに無人機」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-01-28-1
各軍種レベルは依然保守的ですが、それでも例えば海軍トップは、無人機の空中及び水中での活用の重要性を訴え、より軽快で多用途に有用な新型艦船LCSの重要性を説き、脆弱な日本の海軍基地でのプレゼンスについて微妙な表現をしています。
「2025年の米海軍」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-12-19
「補足:海軍トップの論文」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-12-20
米空軍は「作戦面で打たれ強く、地理的に分散し、政治的に持続可能な」態勢を模索する過程で、アフガン、パキスタン、タイ、インドネシア、フィリピン等々、アジアの広範な飛行場インフラの再調査を行い、同時に多様な国との訓練を強化し、相手国の能力向上を図ると共に、米軍兵士の飛行場への習熟を進めているモノと思います。
「前対中国で北東から南東アジアへ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-01-03-1
「後対中国で北東から南東アジアへ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-01-04
「パネッタ長官のアジアツアー」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-10-22
「米国の姿勢シャングリラ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-06-01
「フロノイのアジア政策授業」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-04-30
F-22hardturn.jpgただ米空軍は、依然として戦闘機パイロットを中心とするピラミッド構造で成り立っており、日本ほどではないにしろ、脅威の変化への対応が4軍の中で最も遅れている思います。
「米空軍は、その成功の犠牲者である」・・・前国防長官が空軍士官候補生に語りかけたように、湾岸戦争で「エアパワー」の優越に酔いしれた現米空軍幹部には、根本的な変革は困難なのかも知れません。
「空軍士官候補生へ最終講義」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-03-07
「空軍士官候補生に厳しく語る」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-04-06
「ゲーツ長官が空軍へ最後通牒」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2009-09-17
だらだらと、年明け早々書き連ねてしまいましたが、1月早々にもパネッタ長官が語る2013年度予算案とその背景にある戦略Reviewに注目いたしましょう。
地上部隊についても少し・・・
「前:陸軍士官候補生へ最終講義」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-03-07-1
「後:陸軍士官候補生へ最終講義」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-03-07-2
「陸自削減を支援する・・」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-04
「読売も社説:陸自削減を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-11-21
「国防より組織防衛」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-11-16

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