不穏な国防省アジア次官補人事

4月に辞任したグレグソン国防次官補(アジア大平洋担当:元在日海兵隊司令官)の後任人事が、なにやら怪しげな方向へ進んでいます。
オバマ政権誕生時、「これ以上望めない知日ペア」としてスタートした国務省のキャンベルと国防省のグレグソンのアジアシフトが、アジアで未知のオバマ側近Mark Lippert氏38歳に委ねられようとしています。
17日、議会承認のため上院軍事委員会に出席したMark Lippert氏の経歴
LippertDOD.jpg●オハイオ州出身1978年生。スタンフォード大を国際関係を専攻して卒業。複数の上院議員補佐官からキャリアスタート
上院の外交政策や予算関連委員会で対外政策スタッフを勤める。その後2005年から当時のオバマ議員の外交政策補佐を始める。
●同時に米海軍インテル部門の特別採用士官としてのポストを得て、2007年から1年間、イラクで海軍特殊部隊の情報士官として勤務。
●オバマの大統領選挙で重要な役割を果たし、政権ではNSCのchief of staffに登用された。しかし当時のJames Jones安全担当補佐官に関する情報をメディアにたびたびリークしたことを咎められ、09年10月海軍に復帰すると発表された
●2010年までに海軍大尉に任じられるも、引き続きホワイトハウススタッフとしての報酬を得ているとの報道もある。
Foreign Policy誌電子版はLippert氏を・・・
Lippert2.jpg●グレグソン氏とは異なり、国防省での勤務経験やアジア地域での直接の職務実績はない
●オバマ上院議員補佐官時代からNSC勤務間、アジア政策専門家、NSC、国務省、国防省のアジア関連職員との直接接触を図り、オバマ大統領に直に報告する役割を果たし、オバマ大統領との距離が近い人物
●4月にLippert氏の話が出た際、ゲーツ前国防長官は、ホワイトハウスの回し者が国防省に潜航することを嫌って拒否したが、ゲーツ氏の退任で話が復活した。
●上院軍事委員会の重鎮マケイン議員とグラハム議員は、Lippert氏がアフガン増派反対派であったことから、同氏の就任に否定的らしいが公には行動に出ていない。
17日の証言を米国防省webサイトは・・・
●Lippert氏は国防次官補の課題として、アフガンとパキスタンにおけるアルカイダの分断と解体、東アジアと南アジアの同盟国との米軍体制の維持、インドや中国など新興勢力との関与、大量破壊兵器の拡散防止をあげた。
●同氏は、米太平洋軍や中央軍と協力して課題に取り組み、また地域での安全保障協力強化プログラムやFMSプログラムに責任を持って臨みたいと述べた。
●更に、躍動する台湾の民主主義体制との、包括的で継続的で非公式な関係を強く支援していきたい。
●同時に、中国の作戦機の増強による相対戦力の差、中国と台湾の作戦機比率2300対490に深い懸念を持っている。
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Lippert3.jpgオバマ大統領が、緊要な地域に信頼できる側近を配置するとの意味を持つ人事です。
台湾に対する言及はLippert氏が力を入れている点のようで、Foreign Policy誌も今後軍事委員会でこの話題に対する活発な意見交換が期待できると報じています。
オバマ大統領は軍事に理解がない・・・と国防省では評判が良くないのですが、「ホワイトハウスの回し者」のレッテルを貼られた38歳がどのような動きに出るかが注目されます。
ゲーツ前長官のやんわりオバマ批判
「政治家よ目をそらすな議論を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-05-26
「米国がやらねば他はやらぬ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-05-24-1
「米外交の軍事化を警告」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-06-15-1

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