11月10日、パネッタ国防長官はデンプシー統合参謀本部議長と共に記者会見に臨み、「予算削減の痛み」を当面今後5年間の削減計画を示すことで説明する方向であることを明らかにしました。
●450 billionドル以上の削減目標の一部として、今後5年間に削減する260 billionドルのオプションについて、今後数週間でとりまとめが出来るだろう。
●これは来年2月に提出する2013年度予算案の基礎になるモノで、大きな戦略にも基づき国防省、各軍種、戦闘地域コマンド司令官等との議論を経てまとめられているモノである。
トランスクリプトはこちら
なるほど・・・こういう対応手段がありましたか・・・。引き続きお手並み拝見と参りましょう。
/////////////////////////////////////////////////////////////////
遂に来るモノが来た、との印象です。
これまでご紹介してきたように、11月23日までに米国予算を$1.2 trillion以上削減する計画を議会の俗称「Super Committee」が取りまとめ出来なければ、国防費を既定の$450 billion削減(2023年までに)するだけでなく、更に$600 billion上積みして削減することになっています。これは8月に定められたBudget Control Act.で既に決定してる事項で、「自動的」強制措置です。
これまで米国防省は、$450 billion削減ならば苦しいながら「空虚な軍:Hollow Force」を防げるし、国の機関として応分の責任を果たさなければならない、との姿勢でした。
そして$600 billion上積み削減の影響については、「破滅的な影響」を及ぼすと言及するか、削減全体で危機に立たされる可能性のある装備品や計画を、それぞれの担当幹部がバラバラに曖昧な表現でほのめかす等のはっきりしない態度でした。
更に、与えられた予算でどのような影響が出るかについては、来年2月の予算案提出まではっきり言えない、との姿勢でした。
しかしそんな態度に重鎮上院議員の怒り爆発です。
3日、共に共和党の上院軍事委員会メンバーであるJohn McCain議員とLindsey Graham議員が、連名でパネッタ長官宛の書簡をネット上で公開し、以下の要求をしています。
●「空虚な軍:Hollow Force」を避けたい、しかし「破滅的な影響」が、等の表現で予算削減の影響について話を聞いてきたが、欠けているモノがある。
●欠けているのは、国防費削減でどのような影響が出るのかに関する、率直で正直なアセスメントである。
●無論、個別具体的な影響について予測するのは難しい面もあろうが、特に国防省は$600 billion上積み削減の影響について、「a range of options」を示して欲しい
●国家安全保障のため、議会は仕事をしなければならず、影響に関する特定された実体のある情報を12月以降まで待つことは出来ない。議会だけでなく、国民も削減のリスクを承知しておくべきである。
/////////////////////////////////////////////
パネッタ長官は、ホワイトハウスや議会での豊富な予算策定経験から、現在の「抽象的影響主張」戦術を採っている様ですが、そろそろこの戦術にも限界が来たのでしょうか。
しかし一端削減オプションを提示すれば、素人議論がまかり通る「草刈り場」になる恐れもあり、対応が難しいところです。
そういえばゲーツ前長官は、ホワイトハウスや国民に予算削減のリスクを明確に示し、その上で判断をしてもらうべきだ、と強く主張していましたが・・・。ここはパネッタ長官のお手並み拝見です。
「政治家よ目をそらすな議論を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-05-26
「4段階で経費削減に臨む」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-05-20
「運命の傍観者たることを拒む」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-10-13-1