1日付の各種米軍事サイトが、この秋に開始予定だったフロリダ州エグリン空軍基地での空軍用F-35のパイロット養成教育に、国防省の試験評価局長が「待った」を掛けている、と大きく報じています。
「待った」を要求したのはMichael Gilmore試験評価局長(director of Operational Test and Evaluation)で、21日付の文書を取得担当国防次官へ送付し、その中で教育開始の延期を訴えているようです。
Michael Gilmore試験評価局長の主張は・・・
●初めて運用を開始する航空機は、通常2000~5000時間の各種飛行を重ねることで、種々の不具合や緊急事態の発生頻度を下げる事ができ、飛行準備や途中での運行中止頻度をあるレベルにまで低下させることが出来る。
●飛行教育を開始しようとしている空軍用F-35は、まだ1000時間余りしか飛行しておらず、運行中止頻度も余り低くない
●現在計画されている今秋からのエグリン基地での教育開始を、10ヶ月ほど遅らせ、その間に1000時間ほどの飛行を行って実績や経験を蓄積すべきである
●仮に教育開始を遅らせられないならば、飛行教育はフロリダのエグリン基地ではなく、カリフォルニアのエドワーズ基地で行うべきである。なぜならエドワーズは試験飛行を行ってきた母機地であり、またロッキード社の支援も受けやすいからである。
●F-35の地上シュミュレーターはエグリンにしかないことは承知しているが、飛行学生がエグリンとエドワーズ基地を行き来する交通コストや時間のロスはあっても、リスクを冒すべきではない。
●また、エドワーズ基地周辺の訓練エリアは人口密度がエグリンより低く、緊急時の地上への被害リスクも低い
統合のF-35計画責任者のバレット海軍中将や空軍担当将軍はこの主張に納得せず、「3つ星レベルのリスク評価委員会で、指摘された点については十分に議論を尽くしている」としてGilmore試験評価局長の考えに不同意である旨をwebサイト上で公開したようです。
現時点では、Frank Kendall取得担当国防次官(臨時代理)が空軍に対し、Gilmore局長の分析を踏まえつつ問題を解決するよう促しているようです。
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米空軍は、既に遅れているF-35導入を加速すべく「前のめり」で教育を開始したいようですが、安全面でのリスクをどこまで許容するかは難しい課題です。
先日お伝えした共同開発国である豪によるF-35計画の精査と合わせ、予算との吻合も合わせ各国ともぎりぎりの決断を迫られそうです。
「豪が米のF-35計画精査へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-10-29
「2016年にF-35を日本へ?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-08-16
「F-35輸出商売は好調」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-05-27