昨日はシンクタンクCNASのレポート発表会見から、予算削減過程で陸軍と海兵隊にしわ寄せが来る可能性をご紹介しましたが、10日付「DODBuzz」が、この雰囲気への陸軍長官と陸軍参謀総長の反応をこれまでの発言等からピックアップして記事にしています。
そんなに過激な反応ではありませんが、陸軍の主張にも一理ありますのでご参考まで。
長官と参謀総長は共通して
●国の財政健全化方針を受け、国防省の削減枠に応じて陸軍として受け持つべき予算縮減に対し真摯に取り組む。
●海空軍力の魅力は理解するが、「boots on the ground」及び「troops in the mud」無しに領土を保持することは不可能である。
●また、(どのように我を攻めるかは)敵が選択することであり、我々が敵の行動を縛ることは出来ない。我々は求めに応じ行動できる陸軍を求められており、そのために日々訓練しているのだ。
●最大の予算支出元である陸軍が応分の役割を担い、現在の57万人体制から52万人体制以下になる可能性があることは否定しないが、どのような全体像になろうが、バランスの取れた陸軍の作戦が可能な範囲で行える態勢を維持する。
●どのようなオプションを検討しているかは、現段階ではコメント出来ない。
マクヒュー陸軍長官は・・・
●イラク戦争緒戦の空軍力による「shock and awe」は成功したが、その後陸軍は侵攻することを求められた。他軍種がドアを蹴り開けても、地上戦力が中に入り込む必要があったのだ。また同時に、陸軍もドアを蹴り開ける能力を有している。
●陸軍力に関するマーシャル将軍の言葉を紹介しよう。「仮に1939年時点での伊、独、日本の陸軍力に我々が適切に注目していたならば、また同時に米陸軍が組織的に戦い抜く体制を整え、相手に我の意志と決意が伝わっていたならば、第2次世界大戦は起こらなかったはずだ」
●(国防省が長年維持してきた予算配分の「黄金比率」を維持すべきかとの質問に、)継続することを希望している。
オディエルノ陸軍参謀総長は・・
●私が准将としてペンタゴンに勤務していた当時も、全ての報告や公刊文書に海空が将来の鍵だとする表現が見られた。しかしその後、我々は10年を超える2つの地上戦等に直面することになったのだ。
●ワシントンでは、2つの大規模紛争を同時に戦いうる能力、との表現を削除することで兵力削減が可能になると考える節があるが、この思考には注意が必要。2つの大規模紛争に同時対処の考え方は、911事案以前に、しかも陸軍48万人を念頭に作成されたモノである。
●国防省と陸軍が現在行っている予算見直し結果が、どのような将来体制を考えているのか明らかにすると思うが、イラクとアフガンで血を流した厳しい経験から、48万人体制では期待される役割が果たせないことは既に明らかになっている。
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陸軍に関する事例としては、「第2次大戦後の悪しき軍縮の影響で、朝鮮戦争の緒戦を戦った米陸軍の状態は無惨だった。兵士一人に弾丸わずか200発、訓練と経験不足等々、命を落とした若い兵士のことを思うと、国としての責任の重さを感じる」とリン前副長官が語ったことが思い出されます。
一方、陸軍にしわ寄せ・・との表現で昨日から話題にしていますが、SSBN-Xや空母・強襲揚陸艦体制で海軍が受ける影響も甚大と表現する者もおり、何を持ってどこへの影響が大きいかを判断するのは難しいです。隣の芝は青く見える・・・との表現もあり。
「CNASレポート海空重視で」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-10-10
「陸軍が5万人削減計画を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-09-27
「陸軍は10個旅団削減案を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-09-02
「国防省の予算削減案は来年」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-09-08-1