本年9月、共和党系の有力シンクタンクAEIが「21世紀のアジアの同盟」とのレポートを発表したようです。
レポートの共同執筆者には、過去の政権で国務省や国防省のアジア関係主要ポストを経験し、現在の米国アジア政策の担い手と古森義久氏が呼ぶ人達が名を連ねているようです。
本日は、「前例のないショッキングな提案」と古森義久氏が自身のブログで紹介する中身を、古森氏のブログからご紹介。その1 と その2
アジア情勢認識と米国の立場
●21世紀のアジアで の最大の変化は「中国の膨張が、米国の同盟機能を大幅に弱めたことだ」として、その結果、米国が基本的に一国で引き受けてきた同盟国防衛、戦争抑止、公海の安全保障などの機能も、同盟パートナー側の寄与の増大なしには果たせなくなる。
●米国はパートナーの寄与拡大で2国間同盟を強化するだけでなく、同盟国同士も相互に連携する集団的体制へとシフトさせることが必要だ。日本が軍事的姿勢を強め消極平和主義を放棄することを求める
日本に関する指摘や提案
●アジアでの米国の新しい同盟関係の構築では日本こそが最重要の役割を果たす。これまで限定的な安保協力しか求めてこなかった日本には大幅な軍事寄与を求めねばならない。●朝鮮半島や台湾海峡での軍事衝突開始という有事には、日本が米軍を直接軍事支援することが同盟維持の前提。
●具体的には・・・
・中国が大々的に配備している中距離ミサイルへの抑止のため、日本は中距離ミサイルを配備して中国を射程におさめるべき
・南シナ海などの領有権紛争の平和的解決や航行の自由を保つための海洋の防衛や抑止への日本の大幅な参加を求める。
・中国の台湾攻撃への抑止として日本が南方防衛を強化し、米軍の対中作戦に寄与することを求める。
・中国が台湾攻略の際に威力を発揮する空軍力と潜水艦戦力を抑止するために、日本も米国と協力して航空部隊と潜水艦を増強することを求める。
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「前例のないショッキングな提案」と古森氏は表現していますが、既に民主党政権下の米国防省からも十分なシグナルが発せられています。例えば・・・
●6月4日ゲーツ前国防長官(シャングリラダイアログ)
—安保は一国だけの責任ではない。だからパートナー関係の強化や多国間協力の役割強化を進め、相手国の防衛能力拡大を図る。また今後は展開兵力数(boots on the ground)のみをコミットメントの尺度とすべきではない。今後は艦隊訪問、海軍活動、多様な訓練を複数国参加で実施により、同盟国やパートナー国との関係を強化するだけでなく、相手国の能力強化を図っていく。
—これらのプレゼンスや関与を維持するには資金が必要。米国の経済や財政が困難な状況にある中、米国防費のあり方の議論は避けられない。この問題は広くこの会議や地域で話題にされることであろう。
また、日本は中国の抑止のために弾道ミサイルを配備すべきとのアイデアは、9月来日の米海軍大学Yoshihara博士からも提案されていました。
●琉球列島を日本独自のA2ADで固めてはどうか。山の多い地形を利用して地対地及び地対艦ミサイルを配備すれば、中国海軍艦艇の活動を抑止することが出来るのでは。
●機雷戦能力や潜水艦能力を高めて中国潜水艦を抑止すること、弾道ミサイル防衛能力を高めることも重要。
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古森氏は「日本側の防衛政策を巡る現状を見れば、とんでもない提案」と述べていますが、中国という大国を前にした小国日本は、軍事的にはあらゆる策を柔軟に駆使しないと到底太刀打ちできないと思います。
経費面から考えても、「弾道ミサイルで抑止」は社会のインフラ依存が進む近代国家中国に対し、効率的な抑止獲得投資だと考えます。少なくとも戦闘機や戦闘機を探知するレーダーの開発等の受け身の施策よりは・・