今年も米空軍社会の一大行事である空軍協会航空宇宙会議が始まりました。軍需産業の大展示会を伴って開催される本行事では、空軍をはじめ国防省主要幹部が講演を行い、国内外に空軍の将来計画や当面の課題について説明し協力を訴えることが通例となっています。
今年は金額が不明確ながら大幅な国防予算削減が予期される中、どのような発言をするかに注目が集まっていたところです。
そんな中の19日、空軍関係者のトップを切って登場したドンリー空軍長官は、「全ての削減オプションがテーブルの上にある」と釘を刺しながら、広範な分野で現在の装備や計画を維持推進する必要があると語りました。
威勢の良い、聴衆受けするスピーチかと思ったのですが、米軍事サイトや聴衆の反応は辛口です。
19日付「DODBuzz」は
●ドンリー長官による年中行事でのスピーチは、それが義務あるかのように、ひざまずくような卑屈な態度で譲歩をお願いしているようだった。スピーチ中に聴衆から拍手が起こったのは、空軍が2/3を担う核の3本柱を維持しなければならない、と語った時だけだった。
●同長官は、多様な装備を購入する一方で、現在よりも小型の空軍に成らざるを得ないことを認めた。と同時に、統合の推進役としての任務は果たしていかねばならぬと訴えた。
●しかし過去の空軍の行いを見れば、この発言が余り信用できないと感じた人も多いだろう。米空軍は既に、次期爆撃機と捜索救助用ヘリの開発購入に失敗し、老朽化した弾道ミサイル基地監視用のHU-1ヘリ更新もままならないのだ。
●長官は明確には言わなかったが、国防省はこれまでと異なり、各軍種に等しく投資することが出来なくなっており、陸軍を犠牲にして「バランスの取れた」空軍を目指すのだろう。しかしその空軍が備える戦いは、現空軍関係者の誰もが望んでいない戦いであろう。
19日付「Defense Tech」は
●ドンリー長官は面白い講演を行った。この緊縮財政下、全てが「テーブルの上にある」と述べる一方で、空軍が行っていること全てを全力で守ると語ったのだ。
●長官は空軍の任務はそのままにすべきで、予算の削減は「バランスの取れた戦力」を心に置いて成されるべきと述べた。そして装備品調達や組織について以下のように語った。
—海外でのプレゼンスを維持し、更に統合部隊が頼りにする緊急対応、地球規模の空輸、通信機能を維持する。
—ISR機能の強化前進を続ける。センサー開発、作戦コンセプト、インフラの開発及び要員養成
—F-35は成功させることがマスト。代替は全くない。次期爆撃機と関連する一連の装備獲得には強い決意で望む
—KC-46Aの推進
—新型衛星を購入し、宇宙でのSA(situational awareness)を向上させ、宇宙で増大する脅威に対応する強靱さを獲得する必要がある。
—核抑止3本柱の維持と空軍担当のICBMと爆撃機でのより高い柔軟性確保
—空軍特殊部隊の維持
—サイバー戦能力の強化
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ドンリー長官は講演の中で、「バランスの取れた戦力」との言葉を10回以上使用したようですが、この表現を聴衆や記者は、予算が減っても任務は減らない幅広い一律削減と捕らえたのかも知れません。もしくは、削減に際してのコンセプトや方針事項に言及のない、「義務あるかのような」形式的なスピーチと採ったのかも知れません。
まぁ・・現時点では何も言えないでしょうから仕方ないですが、Air-Sea Battle推進とその背景にある脅威認識を踏まえた内容だと思います。今後、今回の総会で削減の方向性や重視事項が明らかになったら、またご紹介します。
過去の空軍協会総会では・・・
「ゲーツ長官が空軍へ最後通牒」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2009-09-17
空軍の将来については・・・
「空軍士官候補生へ最終講義」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-03-07
「空軍士官候補生に厳しく語る」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-04-06
「戦車、空母、戦闘機に捕らわれている」→http://t.co/tyFxLrq