グアムの基地を強固に

AFM1012.jpg中国が、作戦初動でサイバー攻撃や大量の弾道及び巡航ミサイルで西太平洋地域の米軍作戦基盤の無効化を狙っていることは中国の軍事論文等からも明らかになってきており、シンクタンクシCSBAやRAND研究所もその前提で政策提言を行っています。
そしてゲーツ国防長官もこの基本的認識の元にAir-Sea Battleに期待を寄せているところです。
中国の攻撃可能範囲は拡大を続けており、極東防衛の要であるグアム島の基地防護強化は米軍にとって喫緊の課題となりつつあります。(ついでに申し上げれば、海兵隊のグアム移転などはそのほんの一部に過ぎず、普天間–グアムのラインばかりに目を向けていると、米軍戦略の全体像を見失うことになります)
そこで本日は、グアム島施設の強化に関する最近の発言を各種ご紹介します。
7日、米空軍のシュワルツ参謀総長は下院の軍事施設関連の委員会に出席し、グアム島アンダーセン空軍基地の施設強固化計画について説明しました。
SchwartzAF2.jpg●我々は、建造物の強固化と燃料施設の二重化や抗たん性(redundancy and resilience)強化を確実なものにする。
●2011年度予算には約20億円を、2012年度予算にも同程度を上記施策に投入し、更に弾薬庫や燃料施設、更には機体洗浄施設の強固化等に合計110億円の予算をお願いしたい。熱帯地域での運用を考慮して。
●また、グアムに集中している施設や戦力を、紛争発生時にはグアム島周辺に分散したいと考えている。
太平洋空軍司令官のノース中将も2月に・・・
●グアム島に展開するB-52等の爆撃機は、敵にとって容易な目標である。
●多くの爆撃機を守るシェルター建設は莫大な費用を要するが、貴重な他の国家資産を防衛する航空機を防護することは空軍の義務であることを理解して欲しい。
●どの軍にとっても機動であれ固定であれ基地を守ることがまず第一の仕事である。そしてそれが弾道ミサイルであっても、非運動力性の兵器であってもである。
国防省に近いシンクタンクCNAS研究者は・・
cyberwar.jpg●(Abraham Denmark研究員によれば・・)中国のミサイル技術の向上により、米空軍の太平洋地域の基地は、抗たん化や分散配置を強いられるであろう。
●米国は大規模基地を持つ習慣から離れ、広範な基地ネットワークへと発想の転換を図るべき。
●戦力を(中国近傍から)グアムに移すことは第一歩であり、いずれかはパートナー国と協力して中国のミサイル射程外に米国の戦力投射基盤を持つべきである。
●米国はその方向への取り組みに着手したばかりである。
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SchwartzGen.jpgシュワルツ参謀総長は、「おくゆかしく」中国への直接言及はなく、台風や地震も念頭にあるようなニュアンスをにじませています。しかし中将レベルになると本音ベースです。
中国の脅威が及ぶ範囲が拡大し、米国はその直接的脅威の外に戦力基盤を持とうとする。ごく自然な流れです
しかし日本の国防関係者は、そんな戦略環境の変化に目を背け、「戦闘機命」の旗を依然掲げています。そんなことだから貴重なF-2戦闘機を20機近く津波でやられるんです。
曇りのない眼で極東の戦略環境を見れば、戦闘機命の発想など微塵もわかないと思うのですが・・・。情けない、恥ずかしい。
「前対中国で北東から南東アジアへ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-01-03-1
「後対中国で北東から南東アジアへ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-01-04
「前半:サイバーと宇宙演習の教訓」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-02-01
「後半:サイバーと宇宙演習の教訓」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-02-02
「Air-Sea Battleの状況」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-04-23-1
「Air-Sea Battleの起源」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-06-24-1
「CSBA中国対処構想」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-18

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