バランスの取れた軍を

空軍の歴史の大部分は空中戦と爆撃機の能力で彩られているが、ベトナム戦争以来、空軍パイロットは空中戦で相手から撃墜されていない
我々は統合で調達することがほとんど無い
Iraqlunch.jpg7日からサウジ、UAE、イラクを歴訪しているゲーツ長官ですが、8日イラク北部のモスルに駐留する米陸軍の第4助言支援旅団(AAB:Advise and Assist Brigade)を訪れ、兵士たちに語りかけました。身近な話と軍の将来を憂いて・・・。久々のゲーツ節を米国防省HP記事からご覧下さい。
ちなみに、この助言支援旅団、イラク軍や治安機関が一人立ちできるように教育訓練する事を担当する部隊のことですが、「敵を殲滅することだけを訓練してきた部隊に、相手をなだめてほめて育てることが可能か?」とのゲーツ長官の肝いりで、2008~09年に設けられた新時代のバランスある軍の姿を象徴する部隊です。
まず、兵士に取っての直近問題
●海外派遣と海外派遣の間に本国の部隊で過ごす期間(dwell time)を、今年も末までに2年間に延長したいと考えている。
●これにより、ここ10年間の頻繁な国外駐留によって犠牲になってきた多用な訓練が可能になり、家族等と共に過ごす時間も増えるだろう。
米軍の目指す方向
Iraqtalk.jpg●私が皆と確認しておきたいのは、イラクから、またアフガンから撤退した後も、そこで学んだことを忘れてはならないと言うことである。そしてまた、戦車や大砲を用いた訓練にも取り組まなければならない。
海軍は空母が支配し、戦闘機と爆撃機が空軍を支配し、戦車が陸軍を、そして着上陸用車両が海兵隊を支配しているのが実態である。
皆に気づいて欲しいのは、21世紀には、例えばフルだ・ギャップを侵攻するソ連軍のような敵と対峙することは起こりそうもないことである。陸軍は全てのスペクトラムの能力を備え、異なる全ての任務に対応しなければならないのである。
別の例を挙げよう。空軍の歴史の大部分は空中戦と爆撃機の能力で彩られているが、ベトナム戦争以来、空軍パイロットは空中戦で相手から撃墜されていない
●一方、米空軍は昨年アフガンで37000ソーティーの戦闘支援飛行を行っている。そして傷ついた9700名の陸空海兵隊兵士を前線から救出している。これは極めて重要な任務である。
空軍には忘れないでいてもらいたい。空中戦能力や爆撃機も重要だろう。しかし戦闘支援任務も忘れるなと言いたい。全ての任務を遂行できるバランスのとれた能力を備えよと。
Iraqpress.jpg●これらバランスのとれた能力を備えることの重要性と同時に、それを如何に統合で進めるかが又重要である。
●ここイラクやアフガンでは、米軍史上無かった統合運用が行われている。しかし調達面での統合が進んでいない。我々は統合で調達することがほとんど無い。厳しい予算状況の中、調達分野でも統合を進めなくてはならない。
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米軍の目指す方向に関しては、2009年Jan/Febのフォーリンアフェアーズ誌に掲載されたゲーツ長官の論文「A Balanced Strategy」を是非ご覧下さい。
それと・・本ブログの「ゲーツ国防長官」カテゴリー(特に、各種講演やスピーチ)をクリックして確認してください。
それにしてもアメリカの国防長官は多忙です。
ゲーツ長官改革関連
「ゲーツ改革のまとめ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-06-17
「Transformerゲーツ長官」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-08-17-1
「ゲーツ長官が空軍へ最後通牒」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2009-09-17
「空軍は単に飛んでいたいのか」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-02
「海軍海兵隊とも全面対決へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-04-1
「(追加)海軍海兵隊とも全面対決へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-07
「14兆円精査案で政府議会と」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-01-07
「兵士と将来に9兆円捻出」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-06-29

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