911事案以降、冷戦期とは異なる多様な地域に展開する機会が増えた米軍は、米軍人の異文化理解とその基礎となる語学力の重要性を痛感するに至っています。
特に、国家体制が破綻した又は破綻しかけた国での活動では、反政府組織の浸透を防いで治安を安定させる事が必須の要件であり、そのためには米軍と地域住民との信頼関係の育成や住民の安全確保が欠かせません。
また、治安の安定には地域社会や経済の立て直しを並行して行う必要があり、これらを側面から支援する軍人には地域住民との円滑な意思疎通が求められます。
このような背景から2005年、国防省は言語能力変革ロードマップ(Defense Language Transformation Roadmap)を定め、これを遂行する国防言語室(Defense Language Office)が人事担当国防次官の下に設けられています。
19日、国防言語室のウィーバー室長(Nancy Weaver)が会見し、1月25日から26日にかけて「言語と文化サミット」を開催し、国防省内だけでなく、国全体の語学や異文化理解力を高める方策について議論すると発表しました。
これまでの国防言語室の活動について室長は・・・
●各軍種が語学能力を担当する専門官を設置した
●これまで職業レベルの語学専門家(professional linguists:通訳レベルのことか)は掌握していたが、一般兵士については語学能力を訪ねることはなかった。今では国防省に入る文民と軍人には、使用できる言語を申告する機会を設けている。
●その結果、現在では340以上の言語と方言について、軍人25万人と文民3万3千人の語学能力試験結果又は自己申告能力をファイルしている。正直、これだけの人材を保有していることに我々は気づかずにいたわけである。
●国防省と各軍種は、これらファイルされた情報を基礎に今後取るべき施策について分析を進めているが、今般語学別採用計画を情報を元に初めて作成したところである。
●今後は、ここまで積み上げた統計やインフラを基礎に、組織的に国防省や国の語学・地域情勢・文化の能力を更に発展させる。その第一歩が来週のサミットである。
言語文化サミットについて・・・
●ワシントンDC近郊のホテルで開催する会議には、2-300名が参加する。国防省、関係他省庁、言語や地域情勢学者、科学者、地域部隊司令官等が参加者に含まれる。
●サミットの目的
作戦遂行能力及び国際協力態勢能力を向上させるため、国防省内及び国家全体のLRC能力(language, regional and cultural)を高めるための大胆で革新的なアイディアを議論し推進する。
●討議では、入省後のスキルアップまでの過程だけでなく、幼稚園入園前段階から高校・大学等卒業するまでの入省・入隊前過程での底上げも議論する。また、言語や方言だけでなく、文化、地域情勢の理解能力をいかに高めて行くかを広く議論の対象とする。
●本分野のような人間関係部門に科学技術の導入はあまり進んでいないが、これをどのように生かすかについても討議する予定である。
//////////////////////////////////////////////
軍事力のあり方・適用法
「軍事力使用の3原則」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-03-07
「米外交の軍事化を警告」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-06-15-1
「Transformerゲーツ長官」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-08-17-1
「ゲーツ改革のまとめ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-06-17
ウィーバー室長は退役空軍大佐で、現役時代に空軍の年間最優秀人事業務士官(上級士官部門)に選出された事もあるようです。退役後の国防省でもハイランクの勲章を授与されており、「出来る女性」なようです。
「Transformation Roadmap」との名称は、如何にもラムズフェルド長官時代を感じさせますが、ゲーツ国防長官の削減対象にならなかった事からもその必要性は増しているのでしょう。
同サミットのシンボルバナーの背景には「日本語」との文字も描かれています・・・・中国語が中心でなくて良かった・・・。 いやそれとも、「ますます最近日本が分からなくなってきた・・・」とのサインでしょうか・・・。
コメント