緊縮財政対処のAir-Sea Battle

SchwartzGen.jpg少し前になりますが、12月15日シュワルツ空軍参謀総長が国防大学(NDU:National Defense University)で、大佐クラスの4軍の学生(他国軍を含む)と同大学教授陣を対象とした講義を行っています。口述原稿はこちら
脅威認識と厳しい財政状況を踏まえ、これ以外に道はない、との悲痛な叫びのように「Air-Sea Battle」の背景とその狙いについて語っています
講義は、主要な軍幹部の話を学生が聞くシリーズの一つとして設定されたものですが、将来枢要なポストに就く上級エリート幹部への講義にこのトピックを選んだことからも、空軍にとってAir-Sea Battleが中核的なコンセプトとなりつつあることがが伺えます
Air-Sea Battle に関する「Classifiedな文書」の中身については触れておらず、狙いを概観するような内容ですが、本Conceptが今後の空軍予算の削減と投資の優先分野を決定していく基準(手段?)となりつつあることが推測できます。
講義の概要を2回に分けてご紹介します。
本日はAir-Sea Battleの背景にある情勢認識を、明日は対処の方向性についてです。
情勢と脅威認識について
●手短に言えば、安定が世界中の潜在的な又は顕在化しつつある攻撃的なプレーヤーにより脅かされつつある。またこれまで彼らの手に届かなかった通信、IT、非運動力や高度な兵器技術により安定が脅かされている。
これらの能力は時にネットワーク化され、相手の行動の自由やアクセスを拒否しつつ、攻撃側の能力温存に利用される。
接近拒否能力は全体戦略と組み合わされ、米国やその同盟国のみならず、地球規模の通信、交通や貿易と言った平和の基礎にあるシステムを真に脅かすモノとなり得る。
●厳しい財政下、国家予算や国家資源を巡る厳しい競争の中で、これらの課題は我々に更なる統合と効率化による協力強化を強く求めている
失われつつある行動の自由
SchwartzGen2.jpg●過去数十年間にわたり、米国軍は他の追随を許さない能力で制空権と制海権を確保してきた。そのため我々は、米本土からの戦力投入、海外基地へのアクセスや世界中の戦場への機動力について疑うことは無かった。
しかしこの優位は崩れつつある。潜在的な敵は戦略的に、我々の国益に関わる地域へのアクセスとその能力に挑戦するような先進技術への投資により迫ってきている。
●このような状況下にあっても、同盟国等は引き続き米国に集団安全保障を求めており、我々はアクセスと行動の自由を確保し続けねばならない。さもなければ、より遠方から高いリスクを負いつつ不利な態勢から行動しなければならなくなり、世界的な安全保障に負の影響を与える。
如何にこの状況に対応するか
接近拒否や領域拒否を克服するためには、大きな視点で複数の分野が一体となって取り組む必要がある。
財政的制約下で、潜在的な敵が、我が国益や世界経済、更には世界の危機対処に欠かせない戦力投射能力、特にそれを支える貿易輸送路、海外基盤基地、通信ラインに対峙してくることに対処しなければならない。
●このため、米空軍と海軍、また米軍内だけでなく、国家全体の多様な次元の能力を集合的に自由に活用し、緊要な利害の追求に資する必要がある。
●そのため、全ての国家能力要素が、それぞれのドメインを明確にしつつも、一層相互連接的に相互依存的になる。海上でも、サイバー領域でも陸上でもである。タイムリーに、結節無く、複数の領域が一体統制の元にあることが、いかなる軍への要請に対しても、任務成功の前提条件になってきた。
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本日はここまでとし、明日は対応の方向性についてご紹介します。
端的に言えば、お金がないので、これまでのように4軍間で予算争いをやっている余裕はない、です。更に言えば、下記のCSBAのレポートをオブラートに包んで講義するとこのような形になると思われます。
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「2QDRから日本は何を読む」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-04-01-1
「新防衛大綱とAir-Sea Battle」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-12-19

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