21日付読売新聞社説に「防衛大綱改定 陸自の定員削減が不可欠だ」が掲載されました。
先日、月刊誌・文藝春秋のコラム「霞ヶ関コンフィデンシャル」をご紹介し、陸自定員維持どころか増員を主張する官僚的陸自幹部への批判が広がりつつある状況を取り上げましたが、その波は新聞にも広がりました。
読売新聞社説の概要は・・・
(陸自と財務の攻防)
●日本の防衛体制を強化するには、陸上自衛隊よりも、海上、航空両自衛隊に予算を重点配分する決断が求められる。
●政府の「防衛計画の大綱」改定作業が大詰めを迎えている。焦点の一つが、現大綱で15万5千人とされている陸自定員をどう見直すかという問題だ。
●陸自は当初、南西諸島の防衛体制強化などを理由に、1万人以上の増員を要求していた。その後、増員要求を数千人に下げたが、定員を減らして14万1千人の実員に近づけるよう求める財務省との開きは依然、大きい。
(戦略環境無視の陸自案)
●尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件や中国海空軍の活動範囲の拡大を踏まえれば、与那国島への陸自部隊の配備や、那覇を拠点とする陸自第15旅団の増強は妥当だ。
●だが、その増員分は、純増ではなく、冷戦時代の名残である北海道の2個師団・2個旅団体制などの縮小で捻出(ねんしゅつ)すべきである。陸自の要求は筋が通らない。
●むしろ自衛隊全体のバランスを考えれば、陸自の定員や戦車・火砲を一層削減し、その分を海自と空自の装備や定員の増強に充てる必要がある。南西諸島の陸自を増やしても、制海・空権を確保できなければ、抑止力は強化されない。
(選択と集中の時)
●北朝鮮の核・ミサイルの脅威や中国の急速な軍備増強という状況の下、8年間続いた防衛費の削減には終止符を打つべきだ。一方で、国家財政は厳しく、防衛費の大幅な伸びは非現実的だ。一層の「選択と集中」を進めることが不可欠である。
●ところが、陸海空3自衛隊の予算配分は長年、ほぼ固定されている。今は、3自衛隊の部隊を統合運用する時代になったのに、組織を守ろうとする各自衛隊の縦割り意識が依然強く、冷戦後の防衛力の見直しが不十分なままだ。
(陸自のゆがみと地方政治の悪用)
●陸上自衛官は、他国に比べて、幹部や中堅が多く、若手が少ないという、いびつな階級構成になっている。平均年齢も高い。
●現状では、来年度以降、退職手当の増加などで数百億円単位で人件費が膨張し、装備費や訓練費を圧迫しかねない。給与・定年制の見直しや再就職支援の強化など人件費抑制策の検討が急務だ。
●定員削減には、政治の役割が重要となる。157の陸自駐屯地の統廃合には、特に過疎化が進む地元の反対が強いが、安全保障と過疎対策は区別すべきだ。
文芸春秋のコラム
「国防より組織防衛」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-11-16
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やっとここまで来たかの感じです。財務による「準自衛官」の創設などという珍妙で姑息な対策は忘れ、陸自削減の王道を歩んでほしいものです。
・・・と同時に、このような極めて自然な議論が自衛隊OBから全く聞かれなかったことに大きな失望を覚えます。
同時に、陸自削減も語らずに、国産戦闘機を・・などの戯言を言って企業にすり寄り、老後の生活ばかりを考えた発言をしている自衛隊OBにも要注意です。何の見識も、勉強の後も感じられませんから・・・。
同じ読売の21日朝刊のトップ記事は、「来年4月までに対中新戦略をまとめ事で日米が合意済み。中国の海洋展開への対応が中心課題」との内容になっています。
いよいよ米国発の「Air-Sea Battle」の大波を日本がどのように受け止めるかの正念場になりそうです。「Air-Sea Battle」関連過去記事は「マイカテゴリー」から選択してご覧下さい。それから「Air-Sea Battle」の重要パーツである長距離攻撃(LRS)能力についても再確認され、今後の議論の展開にご準備下さい。
長距離攻撃(LRS)システム構想
「序論:長距離攻撃(LRS)構想」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-25
「本論1:長距離攻撃(LRS)構想」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-26
「本論2:長距離攻撃(LRS)構想」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-26-1
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