中国暴走の陰に軍需利益集団

toriiSEIron1015.jpg最近の中国の振る舞いに憤懣やるかたない皆さんも多かろうと思います。
しかし、ミーハーでノンポリの我が愚妻・愚息までもが中国への怒りをあらわにしている様子を見るにつけ中国の「悪役」「悪党」ぶりが如何にインパクトある教材であったかを感じる今日この頃です。
でも・・・いい加減な中国警戒論ばかりを耳にすると、とりあえずF-Xだとか、日本も空母だ、とかの愚論を展開する輩と同レベルになってしまいますので、もう少し冷静に「悪役」「悪党」を見る必要がありそうです。
例えば、「人民解放軍は共産党の軍だから、暴走するはずがない。」との論が大勢を占めてきましたが、Holylandは少し違う視点も最近必要なのではと感じています。
その辺りを、10月15日付産経新聞の「正論」で中国現代史研究家・鳥居民さんが専門的見地から解説されていますので概要をご紹介します。
鳥居さんの説明によると・・・
鄧小平と江沢民も苦労した
●国防費の毎年の伸び率は平均15%であり、それは21年間続いてきた。始まりは1989年、天安門事件があった年である。士官と兵士の生活改善という名分だった。民衆に向かって武力を行使させた鄧小平としては、陸軍を慰撫しなければならなかったのであろう。
ChinaMil.jpg●そして鄧小平の指名により党中央軍事委員会の主席になった江沢民は、革命戦争と無縁、軍とも無縁だったことから、軍の機嫌を取るため国防費を増やし続けなければならなかった。
●「世界の工場」として経済発展に加速度がつく20000年頃から国防費は増大し、99年から02年には国防費は倍増して2000億元となった。ポスト管理もいい加減で、ロケット師団が新設されて師団長が任命されれば、同じ軍歴を持つ別の将官がごねて、ロケット師団がもうひとつ増設されるといったありさまだった。
●今年の国防予算は、伸び率が1桁になったものの、5321億元(786億ドル)となった。日本円にして6兆9000億円である。
曲がり角の中国経済
●さて、人口増による労働力の増大を土台にし、世界経済の好調に頼った輸出依存の中国経済のシステムは終わろうとしている。中国も間もなく高齢化社会になるのだが、そのための用意が遅れている。経済の2桁成長時代に増え続けた国防費のさらなる増大は自制しなければならないことは、誰もが承知している。
高級軍人たちの古典的欲望
だが、愛国主義を看板に掲げ、古典的な軍拡を夢見る将軍たちが国防費の維持、増大を強く求めていることは想像に難くない。
ChinaSB.jpg中国海軍艦艇が南シナ海や日本近海で緊張を高め、周辺各国を刺激し、騒ぎを引き起こしているのもひとつには、海軍首脳による予算獲得のための国内向け宣伝行動なのだろう。
(Holylandの注:運用の極めて難しい空母渇望をぶちあげる中国海軍関係者もこのような人種であろう。対中国空母を掲げた日本の防衛力整備論者も同類ではあるが・・・)
もう一つの利益集団
●ただし、国防費の維持、増大に血道を上げる最強の勢力は、また別にいるのではないか。
ChinaFlag.jpg●昨年から、権力と利益がらみの国有企業や地主化してしまった地方政府を指して、中国を滅ぼすものだと批判し、「特殊利益集団」だと糾弾している周瑞金というジャーナリストがいるが、その彼をしても批判できないのが、ミサイルから戦車、軍艦、航空・宇宙までの分野にわたる軍需メーカーの一群である。
●これらの軍需工業は、中国の新貴族たちが支配する「特殊利益集団」であり、増大を続ける国防費の最大の受益者である。
●「特殊利益集団」は、小型火器は言うには及ばず、軍用機やミサイルの輸出に懸命である。権威主義的外国政府と連携を深める最も有効な手段が兵器の輸出であることは、中国政府がはっきり認めているところだ。
不透明な軍事費が流れる先に
●米国防総省がこの8月に発表した推計では、昨年度の中国国防費は1500億ドルと公表数字の2倍である。
●政府から公表された数字とまさに同額の“埋蔵金”が存在しているのだ。これが、軍需メーカーの研究、開発費に回され、空母建造や、地対艦ミサイル、衛星破壊兵器の開発・製造の費用に充てられ、輸出も狙っている。
ChinaAF.jpg●米国防省が推計する1500億ドル以外にも、治安維持費という隠れ蓑もある。治安維持費は今年8.9%増えて総額5140億元となり、公表国防費とほぼ同額である。
すべての「特殊利益集団」は、治安維持費を増やし続けてその恩恵にあずかり、米国のロッキード・マーティン社や英国のBAEシステムズのような世界トップの軍需企業になることを夢見ている。これら国防関連予算を削減させないよう暗躍するのは、提督たちの大風呂敷だけではなく、この「特殊利益集団」の力なのである。(以上が「正論」概要)
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chinaecono.jpg中国は各種の国内問題を抱えています。ネット上での世論の暴走。労働者の不満。住宅価格上昇への不満等々・・・
しかし鳥居氏が注目する「軍部の向こう見ずな行動や軍拡」や「軍需利益集団」の暗躍と曲がり角の中国経済との折り合いがつかなくなった時、そのとばっちりを一番に受けるのは我が「日出ずる国」の可能性が高そうです。

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