11月号の航空月刊誌「エアワールド」が、奈良原裕也氏による「イギリス軍に学ぶ自衛隊「リストラ」術」との記事を掲載しています。
この種の航空雑誌には「航空ファン」「JWing」「航空情報」等々がありますが、航空機の美しさにあこがれる根強いファンに支えられているため、最新の戦闘機や航空ショウ、はたまた第2次世界大戦時のオールドファッションな往年の名機を特集として取り上げる事が多く、またそれらを支える最新技術をマニア向けに特集することがお決まりとなりつつあります。
しかししかし、今時の「リストラ術」記事は読者にすり寄らない、時局に適した意欲的な特集として大いに讃えられるべき記事です。
むろん、国家制度が異なる日本と英国では、そのまま単純に参考に出来ない部分もありますが、日本の官僚制度の中で固くなった頭には「目から鱗」の取り組みが取り上げられていますのでご紹介いたします。
細部知りたい部分や有事の対応について聞きたいことが多いのですが、ご興味のある方はぜひご自分で研究してみてください。
英国軍の経費縮減策とは・・・
「英国も国防省改革」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-08-16-1
「英空軍も戦闘機削減へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-08-03
積極的な民間委託
●海軍の補給艦や給油艦を「国防省が保有し、海軍本部が責任を有し、民間人によって運用される船団」として運用している。この補給艦隊の乗員は民間人であるが、国際的には軍人扱い。
●救難部隊を民間委託。海軍・空軍と沿岸警備隊に当たる機関が共同で任務を委託した民間企業が救難任務を担当している。
実際の救難拠点は英空軍の基地にあり、現在は救難機を国が保有する形になっているが、機体自体も民間に移管する方向にあり、2012年からシコルスキー24機の移管から開始し、2016年に完全移管の方向にある。ただ、経費面での縮減効果に関し財務省が再評価しており、変化の可能性もある。
●列線整備以外の大規模な定期整備を一括してメーカーに委託する形にし、一定以上の稼働率を保証させる方式を採用している。稼働率が基準より下がれば罰金を、上回れば賞与wだすけいや句になっている模様
統合運用で重複を排除
●垂直離着陸機ハリアーは海空軍が別々に運用していたが、2000年4月から「統合ハリアー部隊」を編成し、機体を空軍使用型に統一している。海空軍が別々に飛行隊を持っているようであるが、統合によりかなりの重複を排除した。
●ヘリコプター分野でも「統合ヘリコマンド」を99年に発足させた。これは例えば96年のボスニア紛争の際、各軍種が別々にヘリを派遣し、必要機数より4割も多い機体が現地に運び込まれた「笑えない」教訓に基づいている。
リース契約で装備品を
●新型空中給油機(Future Strategic Tanker Transport)では「Air Tanker」との企業連合が機体の保有・維持運用をおこない、空軍が飛行時間を「買う」形を取っている。
●輸送機分野でエアバスA400の開発が遅れた事をきっかけとし、英空軍は4機のC-17を01年からリース契約で使用した。C-17に満足した英空軍はその後購入に切り替え、更に10年までに追加で4機を購入した。フランスもエアバスの遅れに苦労していたが、英国のリースを参考にしようとしている。
更に筆者の奈良原氏は、「日本の警察が駐車違反の取り締まりなどを民間に委託し、警察官をより重大な犯罪対応に当てた」例を引き合いに出し、少子高齢化や厳しい財政下の中での対処策として英国軍を参考にすることを提案しています。
極めて良心的かつ意欲的な記事であり、称賛に値するのでご紹介しました。
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