「We have not seen the productivity growth in the defense economy that we have seen and expect from the rest of the economy」
→我々が他の経済分野で見聞きしている生産性の向上が、国防分野では見られない。
「Designing to affordability, and not just desire or appetite, is critical」
→単なる願望や嗜好からではなく、支払可能額をふまえて設計することが極めて重要である。
14日、米国防省でゲーツ国防長官は担当のカーター国防次官(取得兵站技術担当)と共に記者会見し、「直ちに取りかかる」国防省の取得調達改革の戦略と方針を発表しました。
また会見の最後には、ゲーツ長官の任期が終了してすればコスト削減努力は終わるだろうとの巷の観測を強く否定し、「直ちに開始されるこれらの取り組みは、多くの人々が関与するチーム作業であり・・・無駄な経費を能力向上に振り向ける利点を目の当たりにする文民と軍人のリーダーによって疑いなく引き継がれる」とも語っています。
カーター次官はゲーツ長官に引き続いて細部を説明し、今後5年間で約9兆円を削減する一環として、23項目の行動計画を発表しています。
細部は、会見全体のトランスクリプトと会見用資料(文書24枚)をご覧下さい。
ゲーツ長官の冒頭発言の概要(国防省HP記事より)は・・・
●約60兆円の国防省予算の中で、約35兆円が契約取得経費である。一般国民は年々、同じ価格でもより性能の高いパソコンや携帯電話を手に出来るのに、国防分野ではより高い性能はより高い対価でしか得られない。この流れを変えなければならない。
●この戦略と方針は、取得装備の性能を下げること無しに、より取得しやすい価格へと導くものである。また開発の途中で、経費高騰のため計画を中止せざるを得ないようなことをなくすためのものである。
●国防省は近い将来、次期戦略ミサイル原潜、地上戦闘車両、長距離攻撃システムのプロジェクトをスタートさせる予定で、現時点では総計約17兆円以上の計画となっている。(しかし今後)これらの計画は当初より支払い可能額を踏まえて進められることになる。1機400億円にも高騰した大統領用ヘリの二の舞にはさせない。
●例えば次期戦略ミサイル原潜は、能力を犠牲にすることなく要求を修正したことで、約6000億円から4500億円に価格が低下しつつあり、目標である27%減額に向けて取り組んでいる。
●他に経費見積もりの適正化に取り組む。往々にしてこれまでの経費見積もりは、過去の誤った見積もりを踏襲する形で行われた。今後は、産業界全体の標準で見積もるだけでなく、効果的に管理されれば経費はこの程度になるべきとのレベルを目指すべきである。
●高い効率性を達成した企業や機関には報償を付与する。海軍のPreferred Supplier Program departmentwideはこの良い例である。
●反対に経費超過した場合は、企業と政府側がその責任を共有することとする。F-35計画の遅れと追加経費がこの例に当たる。逆にF-18の複数年契約は、企業と政府側双方にとってwin-winな結果を導き約500億円の削減につながっている。
●本指針は、競争にも焦点を当てている。この競争原理を促進した例としては、沿岸戦闘艦(LCS:littoral combat ship)の選定があげられる。この現在進行している選定要領に関しては現時点で細部に言及できないが、大いなる経費節減の可能性を秘めており、艦艇建造のライフサイクル経費をも削減できる可能性がある。
「海軍も機種選定を延長」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-08-24
●国防省内の業務も当然精査する。年間18兆円にも及ぶ専門業務委託やIT関連経費、施設維持費用までを本日から徹底的に見直す。競争入札の頻度アップを含めた施策を打つ。
●本戦略と指針に沿った施策の進捗状況を確認するため、カーター次官には毎月進捗状況報告を行うよう指示した。
その他、本戦略と指針がオバマ大統領やマレン統合参謀本部議長の強い支持を得ていること、また一夜にして成し遂げられるものではないことも付言しています。
更に最後に、自身が退任しても改革は終わらない旨を冒頭に紹介したように強調しています。(以上記事概要)
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トランスクリプトはA4にして11枚にもなるため原文は未確認です。音声がPodcast用にiTuneに登録されたら聞いてみます。スライドも未確認です。カーター次官の23項目も未確認です。
今後おもしろい内容があればご紹介します。
「ゲーツ改革のまとめ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-06-17
「ゲーツ長官が国防省と議会にも宣戦」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-09
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