再録:米外交の「軍事化」を危惧

再録ですが、日本でもう少し注目されるべき、と考えるゲーツ長官節を再度紹介します。マレン議長の「正しい軍事力使用の3原則」とともにご覧下さい。
なおゲーツ長官は、米外交の「Creeping Militarization(忍び寄る軍事化)」との表現を使っています。
gatesHSG2.jpgフォーリン・アフェアーズ誌6月号に、ゲーツ国防長官が「Helping Others Defend Themselves -The Future of US Security Assistance-」との論文を投稿しています
米外交の「軍事化」を危惧し、国務省と国防省の連携強化を通じ、パートナー国の安全保障能力を強化する支援能力を高めることで、米国の安全保障を強化する必要を説いています。
09年1月・2月号の「A Balanced Strategy」でも本件の重要性は課題の一つとして指摘されていましたが、今回は特出しで問題を論じています。
Flournoy-atCNAS.jpgちょうど10日にも政策担当国防次官のフロノイ女史が、シンクタンクCNASで部署間、省庁間、国家間協力の重要性と必要性を、「現在の官僚的な業務要領は、ビザンチン帝国時代そのままだ
柔軟であるべき時に頑固で、急ぐ時に鈍重で、機動的であるべき時に融通が利かない」と酷評していたところです。
MullenRGS.jpgまた軍人の立場から、マレン統合参謀本部議長も外交における「軍事力への過剰依存」を懸念する発言がなされています。
「正しい軍事力使用の3原則」
  → http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-03-07
ではゲーツ国防長官の論文概要は・・・
テロ核攻撃によって米国の都市が汚染され瓦礫となることが、米国の最大の長期的懸念である。そしてその脅威は、統治されない国や自国を管理できない国から来る
●パートナーが自身で安全保障を確立できるかが、米国のグローバルな指導力維持の重要な鍵であり、米国自身の安全保障強化のために重要
●イラクやアフガンのような大規模なケースは近々にはないだろうが、小規模な紛争で地域のパートナーの能力が鍵となる事態は依然として可能性が高い。
gatesHSG.jpg●米軍は、敵を粉砕することを目的に組織されており、パートナーに助言・訓練し、装備品を整えるようには作られていない。有能な若手将校は、外国軍に助言・訓練することが昇任に繋がるとは見なしていない。なぜなら、予備役、退役軍人や民間軍事会社の手にゆだねられていたからである。
●911までの10年間米国はアフガンを無視し、パキスタンとも軍事交流や訓練プログラムをうち切っていた。この戦略的ダメージは大きく、今になって軍事援助等で埋め合わせることになっている。
私はCIA長官であった時期から、米国の外交が軍事力に頼りすぎ、外交の「軍事化」が進んでいることを目の当たりにしてきた。
●パートナー国の作戦遂行能力を高める点では、米国は大きな進歩を遂げた。しかし、長期の安全保障に必要な国防関連行政機能や軍リーダーなどの人的資源の構築には十分な関心を払ってこなかった
●つまり、危機にさらされている国家の安保関連行政機関、軍、警察、司法等々の統治・監督システムが問題なのである。そして、これら統治・治安能力を強化するためには、米国の複数の政府機関が連携協力しなければならない。また協力を促す柔軟な枠組みが必要である。
私は継続的に、外交と開発援助にもっと予算を割き、軍事部門のみが国家安全保障の中での役割を拡大する外交政策の「軍事化」を是正するよう警告してきた。省庁間のイデオロギーや官僚的な論争を克服し、状況を前に進めなければならない。
モデルとなり得る英国は、各省庁が拠出する基金を立ち上げ、省庁間協力スタイルで対処することの効率性を示している。
●このようなパートナー支援策の原則が5つある。1に柔軟で迅速な対応 2に議会の監視による基金の適切な運用 3に米による支援は長期安定的 4に国務省が主導し外交の優先順位との整合を 5に謙虚で現実的な視点(以上がFA誌論文の概要)
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afganflag.jpgあらゆる方面での国防政策改革に取り組むゲーツ長官ですが、「火の手」が上がっているこの分野が最優先課題かもしれません。省庁間協力は、武器輸出・技術開発協力分野やサーバー戦分野等々・・・これまた山ほど課題を積み上げていますが・・・。

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