「中国の軍事力」に関する米国防省のレポートが遅れに遅れてやっと16日に公表されたようですが、その内容は今後たっぷり報道されると思いますし、サマリーを読む限りは、やはりさまざまな影響を考慮した丸い内容になっていますので特別には取り上げません。
ご興味のある方は以下のページで直接お確かめください・・・
→ http://www.defense.gov/pubs/pdfs/2010_CMPR_Final.pdf
本日はやはり、「ゲーツ長官11年中に退任」報道の引き金を引いた雑誌「フォーリン・ポリシー」の記事「The Transformer」を紹介しなければなりません。
ゲーツ長官を変革者として取り上げ、ペンタゴンをどのように変えていったのかを描くこの記事は、本サイトの主旨とまったく一致するものです。
全文はさすがに無理なので、Holylandが興味を持った部分をご紹介します。ちなみに、「11年中に退任」の部分はほとんど報道以外に内容がないので省略です。
「11年退任」と関連が深い伏線部分
●2007年末、ゲーツ長官にインタビュし「新政権になって続投を要請されたらどうする」と尋ねたところ、「私にとっては受け入れ難い」と彼は答えた。その後も彼はいろんな場所で同様の主旨の発言をしていた。しかし彼は、実際にオバマ大統領から続投要請を受けると即座にYesと答えたのである。
●この経緯について質問したところゲーツ長官は、「2つの戦争が継続中で、多くの若者が日々命を落としていた。このような状況で、もし続投を要請されたらYesと答えるしかなかった。だから私は要請されないように早い段階から「続投しない」と発言してきたのだ」
空軍文化を一変させた空軍参謀総長人事
●モズレー前空軍参謀総長が退任した理由は「核兵器の管理」問題だと公式にはなっているが、詳しい人によるとモズレー氏が無人機の活用や将来について、ゲーツ長官と対立したことが実際の原因だと言われている。
●後任に目立たない空軍輸送コマンド司令官のシュワルツ大将を抜擢したのは、誰も真剣に取り組んでいるようにゲーツ長官に見えなかった新型装甲車(MRAP)の現地への輸送に、不眠不休で取り組んだ同大将の働きぶりが評価されたためである。
陸軍の見方を一変させたのは・・
●イラクやアフガンの現場で、COIN(対反乱作戦)を理解して現場で成果を上げている者が昇進等で評価されない状況を見かね、ゲーツ長官はぺトレイアス大将をチーフとする昇任見直し検討会を設置した。
●その結果、現場の旅団長やその経験者12人が准将に昇任し、組織が何を高く評価するのかを明確に示した。中にはそれまで何回も昇任を見送られてきた幹部も含まれ、視点の変化を如実に示した。
F-22生産を打ち切った理由
●多くの戦闘機乗りが憧れる夢の戦闘機であったが、ゲーツ長官にとっては冷戦の遺物であった。どの国もそんなものを装備していないし、当分装備しそうもない。さらにここ何十年も空中戦をやっていない(必要としない)のに空対空の能力にのみ優れた戦闘機は不要
2009年度に31もの巨大開発計画を削減できた理由
●まずこれまでの経歴や業績から、ゲーツ長官は一般にタカ派と見られており、軟弱な平和主義者とはだれも見ていないこと。
●次に、統合参謀本部の支持を得たこと。これまで装備品の導入を決定する際、部外のアナリストなどがペンタゴンに入って最終調整を行い、最終的な姿が制服組の要望とかけ離れるケースがあったが、今次の削減検討には統合参謀本部がしっかり関与する体制を作ったことが大きい。ゲーツ長官はこれまでのやり方の不味さを知っていたのだ。
●オバマ大統領の強い支持を受けていること。生まれも育ちも経歴も全く異なる二人であるが、大統領はゲーツ長官に絶大な信頼を置いている。F-22を予算案から抜いた形で議会に提出する際、大統領の拒否権発動保障(F-22を議会がねじ込む場合には)が添付されていたが、過去なかったことである。
空母削減を求めないのか?
●「私はたぶん大胆だが、バカ者ではない」(I may be bold, but I am not crazy.)
その他
●昨年12月には発表された「アフガン新戦略」を巡る議論でもゲーツ氏が閣内の議論をまとめた経緯が高く評価されている。
●閣僚の中で大統領に最も近い一人。財務長官、国務長官と並んで4人がホワイトハウスで議論することが多い。
●早くから「米国外交の軍事化」に警告を発してきた。(以上が記事の一部)
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そのほか、興味深いエピソードが多数掲載されており、米国政策を研究される方には有用な記事だど思います。ぜひ涼しい場所でご覧下さい。
(関連記事)
「ゲーツ改革のまとめと整理」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-06-17
空母削減に関するやり取り・・・自分では言わずに、部下に検討させてその方向を出させる、のでしょうか・・・
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