17日、ゲーツ国防長官、クリントン国務長官、チュー・エネルギー長官そしてマレン統合参謀本部議長が上院軍事委員会に出席し、先にロシアとの間で締結された新START条約の早期批准を求めました。
「この条約で大丈夫と考えているのか?」との議員の質問に対し、「大丈夫」と声をそろえる各長官とマレン議長です。しかし7年間の新基準への移行期間に、よぉ~くロシア等の動向を見極めるべき、との健全な常識を示して共和党議員を少しは安心させたようです。
委員会でのやりとりの概要は・・・
●ゲーツ長官は、「本条約は、米露関係の安定を強化する方向で戦略核兵器を削減する」、「ミサイル防衛装備の展開を制約するモノではなく、更にBMDに新たなコストや制限を課すものでもない」と述べ、条約が米に不利ではないと説明しました。
●(露がミサイル防衛に反対していることに関し、ゲーツ長官は)米国のBMDシステムはならず者国家が発射する限定数のBMに対するモノである。「我々のBMDシステムは、ロシアの膨大な先進ミサイルに対して防衛する能力はない。従って、ロシアの戦略抑止力に将来的にも影響を与えるモノではない」
●更にゲーツ長官は、本条約がConventional Prompt Global Strikeの開発や配備を制限するモノではない事を強調しました。(下に参考関連記事)
「核抑止の代替?CSMについて」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-04-25
「PGSのHTV-2試験失敗」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-04-27
●また同長官は、本条約の利点はその強力な検証体制にあると説明し、ロシア側の順守状況をロシアの核戦力数量や構成から監視できると述べました。また毎年18カ所までの現場査察がお互いに出来る利点や6ヶ月毎に更新するデータベースの意義を述べ、更に初の試みとして、個々のICBMやSLBM等に特殊な識別手段を設け、ライフサイクル全般で管理する点も強調しました。
●マレン議長は軍人の代表として、本条約で強力で柔軟な核抑止が保たれ(Retain)、ロシアとのオープンで透明性のある関係を強化することも出来る、と述べました。
●結論として両名からは、本条約が安定、将来の予測、強力な核の3本柱を保つために有効で、核及び非核戦力の配備の柔軟性も確保できることから、早期に批准をお願いする。
●ついでに発言も有りました。ゲーツ長官は、「これまで4年連続で毎春、我が国核戦力関連のインフラ、研究機関及び製造設備への予算配分をお願いしてきたが、初めて今年資金配分を受けることが出来た」と少し嫌みっぽく議員に述べています。
以上が米国防省HP掲載の概要ですが、他の軍事サイトでは以下の発言がちゃんと注目されていました。
●ゲーツ長官:「率直に申しあげて、ロシアや他国の状況を見極めるまで(7年間の移行期間の最後まで条約履行の)最終判断をする必要はない」
●マレン議長:「制服の指揮官達は、相手が期限を守ることを見極めるまで、(条約履行の)最終判断をしないことを強く支持するだろう」
「面従腹背」ではありませんが、オバマ大統領から与えられた枠内で、賢明に国家安全保障に当たる姿が光っています。
条約の細部については、ロシア専門家でもある茂田大使の解説を・・・
→http://blogs.yahoo.co.jp/kokusaijoho_center/35039188.html
→http://blogs.yahoo.co.jp/kokusaijoho_center/35283656.html
(400記事記念の特別保存版記事)
「ゲーツ改革のまとめと整理」
→ http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-06-17
「400記事記念 反響大の記事特集」
→ http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-06-18
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