米国時間27日、オバマ政権となって初めての「国家安全保障戦略(National Security Strategy)」が公表されました。本戦略は米国の法律により毎年議会に提出することが求められていますが、公表されたのは06年3月のブッシュ政権以来で、ブッシュ政権も02年と06年の2回しか公表していません。
内容については既に米国内で縷々報道され、「優先順位が明確でない」、「実施責任の所在が不明確」、「曖昧な表現が多い」等々の批判を浴びているところですが、ここではゲーツ長官が漏らした「本音」をご紹介しましょう。
4月7日、アナポリス海軍士官学校での講演後の質疑応答でのやりとりです。
「iTune」サイトで米国防省がPodcast用に公開している音源をダウンロードしての聞き取りですので完全に正確ではありませんが、概要は以下の通りです。2つ録音のパターンがあり、「Gates Forrestal Lecture」(4月21日アップ)のバージョンに当該部分が含まれています。もう一つの「SECDEF at Naval Academy」(4月8日アップ)からは当該質問のやりとりが削除されて編集されています。2重に掲載してる辺りが米国防省のご愛敬です。(今も掲載されているかは確認してません)
●学生の質問
政権発足後150日以内に議会に提出することになっている「国家安全保障戦略」がまだ提出されてないようですが、どのような状況なのでしょうか?
●ゲーツ長官の回答
議会からは、毎年あれを出せこれを出せのとの要求が山ほどある。考えてくれないか、150日というのは極めて非現実的な期限だと思う。民主党だから、共和党だからといった問題ではないんだ。人間の営みの問題だ。。
国家の戦略を僅か150日ほどの間でレポートにしなければならないんだ。150日だよ(What A hell !! )・・・。なにせ、国全体に関わるから色んな所が色んな意見を言うし、オバマ政権が誕生して主要なポストが埋まるまでに6ヶ月以上かかったのに、そんな状況で国家安全保障戦略を出せというんだ。何が出来ると言うんだ・・・。これまで誰もその期限を守れたことはないんだよ。こないだのNPR(核態勢見直し)も1ヶ月ばかり遅れてしまったしね・・・。
今後2年間の予算でも揉めていて決まっていないのに、今後30年間の航空活動計画や30年間の艦艇建造計画を出せという。信じられるかい(満場笑・拍手)。2~3週間後には発表されるだろうから、そのときまでのお楽しみだな。でも君たちは首になったら困るから、こんな言い方はしないように・・・(注:今週発表されたとしても、既にこの時点から7週間が経過している)
●背景を類推すると・・・
ゲーツ長官は議会に対して大いに不信感を持っています。
特に、国防省・統合参謀本部・空軍が満場一致で「必要ない」と断言し、予算要求に盛り込んでもいないF-35の第2エンジン開発とC-17の追加調達予算を、議会が盛り込もうとしていることに怒り心頭の様子で、「大統領に拒否権を発動するよう強く強くお願いするつもりだ」と最近何度も公式の場で述べているところです。
以前からワシントンDC内を徘徊する「議員」を、「地方の森から連れてこられた野生動物」に例え、ワシントン内でやたら叫び声を上げたり吠えたりするので厄介だ、田舎の自然の中でおとなしくしているところを、自分も田舎に帰ってゆっくり観察したい。・・・・と、議員の行状に憤懣やるかたないご様子で、相手をしてられない、早く引退したい・・・とも思いを漏らしています。
(士官候補生への講演の概要:なかなか良いお話です)
「海軍士官候補生には少しソフトに」
→ http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-04-09
「士官候補生に語るシリーズ」
→ http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-04-10
「空軍士官候補生に厳しく語る」
→ http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-04-06
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