QDR発表以降、折に触れ中国の軍備増強への米国の対応をフォローしてきましたが、本日はその最前線に立つお隣の台湾空軍を、Air Force Mgazine5月号の記事から概観したいと思います。
オバマ大統領が本年1月末に台湾への武器売却を許可し、ミサイル防衛用PAC-3、ブラックホーク多用途ヘリ、ハプーン対艦ミサイル、戦闘機用通信装置、そして機雷掃海艇がその売却リストに入りました。この売却は、ブッシュ大統領時代の08年10月以来の武器売却です。
これを受け、お約束のように中国は米国との軍事対話を中断し、未だにぎくしゃくした状況にあります。
売却リストには6000億円の兵器が盛り込まれていますが、元々の台湾の希望リストには66機のF-16戦闘機と潜水艦が含まれていました。
台湾空軍はF-16A/B、Mirage-2000、国産のF-CK-1とF-5を保有していますが・・・
●F-16は1992年に米国から144機購入しましたが、陳腐化・老朽化が進み、台湾は2006年からF-16能力向上、中古F-15購入、F-16C/D購入などのオプションやMirageの能力向上を誅求してきました。しかしどれも米やフランスから許可されず、今回1月の判断でもF-16C/D購入のオプションが却下されました。
●56機を保有するM-2000は非常にトラブルが多く、稼働機数は30機程度と言われており、台湾空軍はモスボール(長期保管)状態にして、有事の緊急用としたい模様です。
●約120機を保有する国産のF-CK-1経国戦闘機は一応4世代機と言われていますが、一般に軽戦闘機と分類されるように航続距離も搭載武装も限定され、連続運用にも耐えられないレベルの空対空戦闘機のようです。
●34機のF-5は、練習機としてだましだまし使用しているようです。
台湾空軍は、66機のF-16C/Dを入手できても、中国が350機を越えて更に急増させている4世代機(SU-27、SU-30、J-10)数に及びませんが、せめて問題の多いミラージュとF-5を早く退役させたいとの切なる願いを持っていたと言われています。
潜水艦に関しては・・・
●米国は原子力推進の潜水艦製造ラインしか保有しておらず、仮に台湾に売却するにしても第3国が製造する必要があります。
●通常推進の潜水艦は独や北欧諸国が生産候補国ですが、中国との関係悪化を案じ、どこも及び腰。一時はイスラエルの旧式潜水艦売却の噂までありましたが、どれも実現していません。
何とかならないモノかとは思いますが・・・後藤新平が精魂込めて改革した台湾が・・・せめて厳しい国際社会を学ぶ題材としたいモノです。日本人の・・
「CSBA中国対処構想」
→ http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-18
「嘉手納から有事早々撤退?」
→ http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-13
「Air-Sea Battle Conceptの状況」
→ http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-04-23-1
「QDRから日本は何を読みとるべきか(Ver.1)」
→ http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-02-07
「どんな兵器を:Anti-Access環境対応」
→ http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-03-04
「米空軍OBが断末魔の叫び」
→ http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-04-05-1
「なぜ空自にステルス機?」
→ http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2009-11-26-1
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