CSBAと「Joint Air-Sea Battle Concept」の関連記事一覧はこちら
2月7日のVer.1からかなりの時間がたったので、Ver.2で頭の整理を、と考えていたところZAKZAKにて以下のような記事を発見しました。
→ http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20100330/plt1003301607003-n2.htm
(以下記事の概要)
米国防総省(ペンタゴン)中枢から衝撃の警告。大宅賞ジャーナリスト・加藤昭氏の迫真リポート
「鳩山政権は安全保障の要諦をまるで理解していない。今後、『日米軍事同盟の解消』という選択肢も検討する必要がある」 こう語るのは、ペンタゴンで対日政策を担当するM・シファー国防次官補代理の側近A氏。軍備管理の専門家で、米軍基地再編の中心人物である。衝撃発言の真意を聞いた。
Q 同盟解消とは尋常ではない。日米関係はそれほど深刻か
A 「2段階移設案を聞き、ペンタゴンでは『鳩山政権との交渉は意味がない』とブーイングが上がった。もし、鳩山首相が5月末までに、この案しか示さなければ、不信感はピークに達し、『同盟を破棄すべき』との声が噴出するだろう」
Q どこが問題か
A 「提案は一連の日米交渉で否定されたもの。それを踏まえて2006年、両国は『ベストではないがベターな案』としてキャンプ・シュワブ沿岸部で合意した。白紙に戻すのは時間の浪費であり、同盟国としての信頼関係を損ねる」
Q 他に不信理由は
A 「同盟の根幹にかかわる重大問題がある。ペンタゴンは2月、使者2人を東京に送った。オバマ政権で軍事戦略を担当するC・ヒックス国防副次官とシファー国防次官補代理だ。2人の任務は『国防戦略報告書』(QDR)の内容を鳩山政権に説明し、東アジアにおける安全保障構想を徹底させるものだ」
Q 何か問題が?
A 「最重要テーマは中国の軍事力増強という脅威だ。2人は外務省の藪中三十二次官や防衛省幹部に『日米間で緊密に対中政策を話し合う必要がある』と説いた。ところが、鳩山政権は同調しないだけでなく、鳩山首相は直後のインタビューで『日中関係が良くなれば、日米、米中関係も良くなる』とノー天気に語った。ペンタゴンはこの非現実的な安保哲学に驚き、心底落胆した」
Q それだけか
A 「岡田外相が以前、ワシントンに来て『核の先制不使用』を迫った。核抑止力に代わる軍事戦略も示さずにだ。『鳩山政権=社会主義ポピュリズム政権』との酷評が定着している」
(以上記事の概要)
以上記事が本当だとすると(本当のような気がしますが・・)、力も抜けてしまうのですが・・・、自分の頭の整理のために書いてみます。
Ver.1と同じ土俵で以下の3つの視点から・・・
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1●米の対中国作戦にどう関与するか(Anti-access環境でどうする)
米軍は第1列島線東側からの長距離攻撃で中国に対応しようとしています。空母搭載の無人機N-UCASは行動半径約2000km、射程900km以上の長距離ステルスミサイルJASSM-ER、潜水艦発射の巡航ミサイル、無人潜水艦等々がQDRの示す候補兵器群です。いずれも中国弾道ミサイルDF-21の射程ぎりぎりから運用可であったり、第一列島線以遠から中国本土に届くものばかりです。
検討中の「Joint air-sea battle concept」で具体的に示されるのでしょうが、この場合日本本土から作戦を起こす必要が無く、在日米軍基地の役割は現状から大きく変化する可能性があります。
平たく言えば、日本は防空なり沿岸防衛を真剣に自力で行う必要があります。せめて米軍の作戦を側面からでも支えられるように、「浮沈空母」的に本土を活用したISRや通信などの支援体制を整備し、米軍から頼りにされるぐらいを目指さないと、米軍はどんどん遠ざかっていくでしょう。
2●在日米軍基地施設の抗たん性・弾力性(resiliency)向上にどう協力するか
BMDの強化に取り組んで間接的に在日米軍部隊への「傘」を強化すること、通信インフラやサイバー戦分野で米と協力しバックアップができるようにすること、物理的抗たん性確保のため「思いやり予算」の増額する等が期待されるのでしょう・・・。
せめてそれぐらいやらないと、ゲーツ長官が「短距離システムから長距離攻撃能力へのシフト」と述べるように、脆弱な在日米軍基地からは現在配備の戦闘機・戦闘爆撃機はいなくなる(米本土で戦闘機が不足していることもあり)でしょう。米が脆弱だと行っている場所に、米がニッチな能力と考えている「F-22がのどから手が出るほどほしい」といった方もいましたが・・・。資源配分を本当に考える必要があると思います。もっとも、「のどから手がでる」方は、「F-22が入ったら、お金がなくなるから、戦闘機を70-80機減らすんだな・・」とのバランス感覚もお持ちだったようです。
脆弱で危険な横田で日米共同指揮所出張所は破談じゃないでしょうか、少なくとも骨抜きでしょうね・・・、普天間のちゃぶ台返しを米側から引き合いに出され・・そもそも横田で何かやる気があったのでしょうか米軍は・・・
3●米の共同開発・技術協力への呼びかけにどう答えるか
作戦面で米軍を引きつけることが難しいなら、日本人の器用さ細やかさを生かして技術面でスクラムを組むしかありません。最近は軍事技術も民間の技術も違いが無くなってきていますから、ここで「武器輸出3原則」もよく考えていただいて、日米同盟のために何が出来るか考えていただきましょう。
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3月30日に公表の防衛研究所「東アジア戦略概観2010」には
→ http://www.nids.go.jp/publication/east-asian/j2010.html
「(中国海軍の)「遠海防衛」の具体的内容は今のところ不明である。しかしながら、近年中国海軍艦艇の太平洋での活動が顕著になっていることから、いわゆる第1列島線(南西諸島、台湾、フィリピンを結ぶ列島線) と第2列島線(小笠原諸島、グアムを結ぶ列島線) の間での作戦を想定していることは間違いない。」との一歩踏み込んだ記述(p117)も見られ、防衛省側からも精一杯の危機感が発信されています。
冒頭で引用したZAKZAKの記事には、日本なしの極東戦略を米国防省が検討した最近のレポートもある、との記述もあります。このようなリーク記事も様々な駆け引きの一環でしょうが、ゲーツ国防長官の怖さをまだ日本人(宇宙人?)は気づいていないような気がします。
最後は普天間問題で困った日本側が得意の「裏金」で米国と沖縄に黙ってもらう事になるのでは・・・。真の日本の国力・国益に関する議論なしに・・・。選挙のためだけに、目先のことだけに囚われ・・・・、てな事にならないことを切に祈るばかりです。
Air-Sea Battle関連記事
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「番外CSBA中国対処構想」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-06-02-1
「Air-Sea Battleの状況」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-04-23-1
「Air-Sea Battleの起源」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-06-24-1
「太平洋軍のAir-Sea Battle検討」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-08-05
「嘉手納から有事早々撤退?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-13
(付録)
「Air-Sea Battle Conceptの状況」
→ http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-04-23-1
「QDRから日本は何を読みとるべきか(Ver.1)」
→ http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-02-07
「米の対中国新作戦は「Joint Air-Sea Battle」」)
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「Joint Air-Sea Battle Conceptは平成の黒船」
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「どんな兵器を:Anti-Access環境対応」
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「韓国の米軍再編は順調」
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