MALDとはMiniature Air-Launched Decoyの略で、つまり航空機から発射して相手を攪乱するデコイ、おとりです。単なるおとりから最近では更に電子妨害機能を搭載したMALD-J、更に更にデコイや無人電子妨害機としての役割を終えた後は、搭載した弾頭で攻撃、といった発想まで生まれつつあります。
このようなデコイ(おとり)の発想は決して新しくないのですが、QDRで中国を多分に意識した「anti-access」環境への対応が課題になる中、またまた日の目を見ることになってきています。
コソボ紛争で、ステルス機のF-117がボスニア兵の携行式小型SAMに迎撃された事案のように、ステルス機でも原始的な兵器に撃墜されることがあることから、国防省隷下の開発局が1998年頃原型の開発に着手しましたが、経費や性能面で折り合いがつかず、当時担当していたノースロップ社の試作品は量産中止。
しかし、ロシア製SA-20のような高性能地対空ミサイルが輸出され、anti-accessに使用され出すと、開発が復活。
2003年に米空軍がレイセオンに対し開発要求を行い、2000年当時1発300万円だった価格要求を1000万円にアップ。それに併せて要求性能を、3万Ftで45分、3千Ftで20分の滞空時間や航続距離約900kmにアップしてプロジェクトが再スタートしました。
全長約2.8m 幅1.7m(翼を転伸時)で、F-16(写真でオレンジの搭載物)やB-52からの発射が現時点では可能です。2009年3月に初期生産分を空軍受領し2011年ぐらいまで生産が続くようです。
電子妨害機能を持ったMALD-Jの開発は2008年4月から。09年12月までに一連の試験を実施、試験結果に基づき09年2月デザイン改修検討終了。 今後各種試験を経た後、2011年に初期生産開始の予定です。
使用法のイメージとしては・・・
非ステルス機の侵攻シナリオでは、まず海軍機EA-18Gがその電子戦能力で電子攻撃を行い、ハイブリッド防空網に突破口をあけ、非ステルス機が防空網を突破する。
次に、無人の空中発射型デコイECM装置MALD-Jを投入して相手を攪乱し、またステルス巡航ミサイルJASSM(Joint Air-to-Surface Standoff Missiles)が敵防空網や指揮機能を破壊する、といったイメージです。
使い捨てとなるMALDには弾頭を搭載する検討もなされているもようです。
「どんな兵器を:Anti-Access環境対応」
→ http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-03-04
「Anti-Access環境への対応コンセプト」
→ http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-03-03
「QDRから日本は何を読みとるべきか」
→ http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-02-07
コメント