3月11日前後に米国防大学でQDRに関する2日間のセミナーが開催され、発表後1ヶ月が経過したQDRに関する議論が行われた模様です。米国防省HPは、その中で国防省高官(匿名)がQDRに対する疑問質問に答える様子を伝えています。なぜ匿名なんでしょうか・・・。
それにしても、QDRに対する根深い反発とそれに対応する国防省の戦いが感じられます。軍事力に関しては、文民も軍人も関係者は極めて保守的ですから・・・
●(Q)2010 QDRは戦略ビジョンや概念枠組みを提供していない
(解答)QDRは米国の安全保障環境のアセスメントから始まっている。関係政府機関を交えた精力的な情勢分析を踏まえている。我々は今後20年間の国防省を見据えた、明確な戦略で、準備し、圧倒し、勝ち抜く目標を見据えている。強力な戦略を求めたのであり、特定の兵器を求めることを示したのではない。
●(Q)QDRは反駁することを主張している。例えば厳しい予算状況との乖離
(解答)本QDRは年度予算と密接に関連している。これまでのQDRが年度予算と別扱いになっているとの批判に答えたものである。ゲーツ長官は、常にQDRの指針に沿って前進しようとしているし、全ての予算が我々の戦力目標に向かうように常にリンケージを確認している。
●(Q)今の戦いを重視しすぎて将来の脅威対応が不十分
(解答)我々はいくつかの将来の挑戦に対して対応方針を示している。ただし今日の脅威の重要性は保証される。今現在も作戦地域にいる兵士への必要な支援について一層の注意を払わなければ、それは無責任というものである。
●(Q)QDRの言及や結論が検討途上や政府の方針と異なっているのでは
(解答)これまでにないレベルで国防省内外と調整を図ってきた。国家安全保障スタッフとは大統領の優先事項を、地域戦闘司令官とも検討過程の初期段階からかつて無い連携を行った。QDRは全ての事項に触れているわけではなく、未決の事項も含まれている。しかし関係機関の裁量の余地を残したものである。
具体的な中身には触れていませんが、予算を切られた分野、将来が明るくない職域、宇宙(SPR)や核態勢見直し(NPR)の遅れなどからくる質問への対応と思われます。方向を変えるときにはどんな組織でもこんな動きがあるもんです。ゲーツ長官には年末の進退再判断まで頑張っていただきたいものです。
本日の写真は10~11日に掛けてサウジとUAEを歴訪しているゲーツ長官です。国旗の前のスピーチは場所秘匿ですが、日程上UAEです。空中給油・ISR等の第380と第389派遣航空団はUAEにある模様です。UAEの巨大モスク見学とサウジ国王との会談です。QDRとイラン対応の協議でしょう。
(付録)
「どんな兵器を:Anti-Access環境対応」
→ http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-03-04
「Anti-Access環境への対応コンセプト」
→ http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-03-03
「QDRから日本は何を読みとるべきか」
→ http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-02-07
QDRにおける対中国の新作戦構想に関する部分(Holyland推定)
→ http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-02-05
「Joint Air-Sea Battle Conceptは平成の黒船」
→ http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-02-09
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