昨日に引き続き、「rebalance」と「reform」をキーワードに各種変革・改革への取り組みが語られている2010 QDRから、「reform」により国防省や米連邦政府の業務や対外政策に関する改革を目指す部分を紹介します。本日は、「輸出管理システムの改善(Reforming the U.S. Export Control System)」の概要を紹介します。僅か1ページ(2010年QDR p83-p84)の記述ですが、日本にとっての影響もチャンスも含んだ意味深な部分ですので、是非本文もご確認下さい。
(本日の写真は本文とは全く関係なく、8日アフガンを訪問し、Marja作戦の状況を聞くゲーツ長官の様子です)
軍事技術の「輸出管理システムの改善」の概要は・・・
●現在の輸出管理システムは冷戦の「遺物」であり、現在の脅威に適応するものに変えなければならない。この仕組みは歴史的には一定の役割は果たしたが、それは米国経済が大部分の技術開発を独力で可能で、旧ソ連への漏洩を警戒していれば良かった当時のものである。
●現システムは、同盟国やパートナーとの国際協力、技術共有、相互運用性を妨げている。広く一般に入手可能な技術にまで、我々のシステムはチェックを入れ続けている。これにより外国の顧客は(米国製ではなく)外国の供給者を求め、米国企業は輸出規制に影響を受けない外国企業パートナーを探している状況である。
●また逆に現システムは、輸出規制違反の探知や抑止、処罰の適切な強化を許さない。米国政府は重要技術や部品の保護に適切な注目をしていない。
●これらの不具合は、根本的な改革でしか解決できない。よって大統領は、安全保障、外交、経済的な利害のための改革方向を見定める検討を指示している。この改革には省庁間の協力が必要で、また議会の関与が不可欠である。
QDRとBMDR発表の前後には、1月にゲーツ長官はインド、2月にはイタリア、トルコ、フランスとISAF関係諸国会議、リン国防副長官が1月に英、2月に豪を相次いで歴訪し、アフガニスタン対応と併せて兵器開発やサイバー対処の技術協力強化を呼びかけています。
具体例として、英国議会の関連委員会でリン国防副長官は「我々両国のため、オバマ政権は新しい兵器システム開発経費を抑えたい」と切り出し、「米は、迷路のようなライセンス発行業務の換わりに、緊要な技術開発に集中する」、「真にユニークな技術のみ輸出規制の対象とすることが、我が国の安全保障、経済そして産業界のためである」等と語り、米英軍需産業の協力強化の必要性を訴えています。また協力強化への呼びかけと同時に、米国の兵器輸出に関する規制が「冷戦当時の2極世界観を引きずり」現状にあわない、と厳しく自己批判を行っているところです。
日本にとってもチャンスだとは思うのですが・・・。小さくて見えないかもしれませんが、普天間問題でお馴染みのクレグソン国防次官補も同行しています。こっちの方がお忙しいのかもしれません。
「米が武器輸出・共同開発の方針転換へ」
→ http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-04-22
(付録)
「どんな兵器を:Anti-Access環境対応」
→ http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-03-04
「Anti-Access環境への対応コンセプト」
→ http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-03-03
「QDRから日本は何を読みとるべきか」
→ http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-02-07
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