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2010QDRの中で、「Anti-Access」環境への対応、つまり対中国(公式には認めていないが)の作戦コンセプトとして打ち上げられたのが「Joint Air-Sea Battle Concept」です。そのネーミングは、冷戦最盛期であった80年代の対ワルシャワ条約軍を想定した「Air-Land Battle Concept」を彷彿とさせます。
その背景には、米軍が経験したことのない高レベルの拒否戦略(anti-access)を実行に移しつつある中国への対応と、「今現在の戦い」に手一杯で潤沢な予算がない台所事情があると思われます。
ゲーツ長官は昨年秋頃、米海軍と空軍に対し、もっと協力して考えろ、と「Joint Air-Sea Battle Concept」検討を指示した模様です。無論、諸般の情勢から両軍ともその必要性は以前から感じていた模様で、特にラヘッド海軍作戦部長(米海軍のトップ)がグローバルホークや将来の統合無人システム等の無人機分野でより深く協力したい意向を持っているようです。写真は空軍参謀総長と海軍作戦部長
米海空軍の現状・特性を列挙してみると・・・
●共通しているのは、中国保有のDF-21等の移動式弾道ミサイルや巡航ミサイル、航空機等により、海軍空母も空軍飛行場もかつて無いリスク環境下におかれる。
●空軍はanti-access対応のステルス長距離攻撃力としてB-2爆撃機20機しか保有しない。F-22の能力は限定的ニッチである。一方、海軍はステルス機は持たず、無人艦載機もないが、潜水艦や艦艇発射型の巡航ミサイルオプションがある。
●QDRが重視している電子攻撃は(EA)分野で、空軍はスタンドオフ電子戦機が無く、海軍のEA-6BやEA-18Gに依存せざるを得ない状況にある。
●海軍は空中給油、ISR、通信で空軍に大きく依存している。
このように一長一短がある両軍は、相互に作戦コンセプトをすり合わせて検討した上で・・・QDRが提案する以下のような装備の具体的姿を詰める必要があります。
●長距離攻撃兵器
→ 潜水艦発射型長距離兵器、海空共用巡航ミサイル、(無人)電子戦兵器
●無人偵察・攻撃兵器
→ 空母搭載型の無人偵察攻撃機、無人潜水艦、空軍爆撃機の後継兵器
●装備とは別に、在日米軍基地施設の抗たん性・弾力性(resiliency)向上も求められています。
判ってはいるが両軍の頭には、航空戦力を巡る歴史上の因縁が・・・
●1940年代後半、海軍が巨大な甲板を持つ大型空母計画を練っていたとき、空軍は地上発進型のB-36を国防関係指導者に売り込み、海軍航空関係者の空母計画をつぶした経緯が・・。その際の怨念は今も海軍航空関係者に語り継がれているとか・・・
いずれにしても、米軍の極東での戦力運用思想は大きく変化しようとしています。日本はどう対応すればよいのでしょうか? 海空の統合作戦も施設のみならず指揮通信機能をも含めた抗たん性・弾力性(resiliency)も誰もが気づきながら・・・の部分です。米軍のこの動きが平成の「黒船」となって変化をもたらすのでしょうか。
(付録)
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