2月1日、QDRと共に公表された弾道ミサイル防衛見直し(BMDR)に示された6つの優先事項に関して、フロノイ国防次官(政策担当:Michele Flournoy, undersecretary of defense for policy 写真右)が次のように語りました。
●米国を限定的な弾道ミサイルの脅威から防衛すること
●(米国展開部隊や米国の国外権益を)高まりつつある地域脅威から防衛すること
●展開配備前に、新たなシステムが有効かどうか実戦的な環境下でテストすること
●経済的に維持可能な新しいシステムを開発すること
●脅威の変化に柔軟に対応できるような能力開発
●ミサイル防衛の国際協力をリードすること
これら6つの優先事項に取り組むことにより・・・
●WMD保有を狙う国家に対抗し、地域の抑止同盟を強固にすることに役立つ。(解釈:核の傘の中にいる同盟国が、独自に核保有に走ることを防止したい)
ロシアとのSTART1後継条約締結が山場であることに配慮し・・・
●米本土のミサイル防衛努力は、イランや北朝鮮などのアクターに焦点を当てた物で、ロシアや中国との戦略バランスに影響を与える意図はない。
「国際協力をリードする」の部分では、欧州、東アジア、中東湾岸との協力について取り上げた後、あえてロシアと中国を一国づつ取り上げて言及しています。
●ロシア → イラン対応での協力推進と核兵器管理をも含めた包括的な話し合いの継続
●中国 → 対話の推進により弾道ミサイル防衛について相互理解を推進する
脅威を考えると無視できないが、金食い虫であるBMDを厳しく精査しつつ慎重に進めようとの姿勢です。日本にとっての「国際協力」とは・・・、SM3の改良開発にお金を出すことが求められるでしょう。米本土の防衛については、ゲーツ長官(経費面)やオバマ大統領(対中露政策)もかなり慎重なようです。
(参考)
「どんな兵器を:Anti-Access環境対応」
→ http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-03-04
「Anti-Access環境への対応コンセプト」
→ http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-03-03
「QDRから日本は何を読みとるべきか」
→ http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-02-07
QDRにおける対中国の新作戦構想に関する部分(Holyland推定)
→ http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-02-05
「Joint Air-Sea Battle Conceptは平成の黒船」
→ http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-02-09
(付録)
各新聞等がQDRについて本朝あたりから詳しく報道を始めましたが、ゲーツ国防長官の考え方を、日本への影響の観点で十分に踏まえていないような気がしてなりません。そこで、QDRの背景にあるいくつかのゲーツ長官語録を紹介します。
その前に・・・、今朝の新聞各紙がゲーツ長官の普天間の件に関する発言「合言葉は忍耐」を掲載していますが、このやりとりの質問をした日本のTBSの質問が、ゲーツ長官の細かな単語の用法の変化についてであったため、ゲーツ長官が「貴方は(旧ソ連の)クレムリンの発言分析家になったほうが良いかも・・・」と皮肉たっぷりに返し、周りの記者からもTBSに対し嘲笑が起こっています。 日本のマスコミの皆さん、重箱の隅つつきは止めた方がいいですよ・・・
●脅威認識について
「全ての潜在的敵対者、つまりテログループ、ならず者国家、ライジングパワー、これら全てが共通に学び得たものは、米国と通常戦の手法で正面から対峙するのは賢明ではないとの認識である。」(フォーリンアフェアーズ誌への論文「A Balanced Strategy」から)
●中国への対応
「中国のような軍備増強している国を考える際、対称的な挑戦、つまり戦闘機対戦闘機や艦艇対艦艇のような挑戦を米国が懸念する必要はそれ程ないだろう。しかし、彼らが我々の機動を妨げ選択肢を狭める能力には懸念をもつべきであろう。彼らのサイバー戦、対衛星・対空・対艦兵器、弾道ミサイルへの投資は、米軍の主要なプロジェクション能力と同盟国の支援能力を脅かす。特に前線海外基地と空母機動部隊に対して顕著である。またそれらへの投資は、足の短い戦闘機の有効性を殺ぎ、どのような形であれ遠方攻撃能力の重要性を増す。」(AFAでの昨年9月の演説)
「中国の投資に対応して、米国は、見通し線外からの攻撃力やBMD配備に重点を置き、また短距離システムから次世代爆撃機のような長距離システムへのシフトを求められるだろう」(同上論文より)
●日本との関係関連
「日本と韓国は、自ら防衛任務を担えるよう取り組んでいる。その結果として、米国と両国はパトロンではなく、パートナーとしてより適当であるように調整を続けてきた。しかし、依然として、パートナーとして完全に準備し、全ての、くり返すが、同盟国としての全ての義務を果たすことができるパートナーでなければならない。」(シャングリラダイアログでの演説)
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