核密約と抑止を元外務省幹部が語る(前編)

sigetaH.jpg元外務省国際情報局長、元イスラエル大使、元朝鮮半島問題担当大使であった茂田宏さんのブログ「国際情報センター」から思いっきり引用させていただきます。茂田さんのブログは、超超上質のインテリジェンスを提供するサイトですので、是非日常的にご覧ください。
本日は前編として、「密約」の位置づけやその意味するところ、現時点での問題点等について茂田さんの雑感を紹介します。明日の後編では、米国の核拡大抑止が有事にどのように機能するか、日本は如何に対応すべきか、について茂田さんのご意見を紹介します。
●公的に引き継がれなかった密約・約束
satounixon.jpgtanakaford.jpg佐藤・ニクソン間の密約文書(有事の際の沖縄への核再持ち込み)が外務省にはなく、佐藤信二氏の手元にあることが判明した。佐藤総理がなぜ後任の田中総理に引き継がなかったのか、よくわからない。ニクソン大統領も弾劾のごたごたの中での辞任であったので、フォード大統領に引き継いでいない可能性もある。両首脳が約束したが、後任への引き継ぎがなかったとしたら、これは私的な約束であったと考えてよいのではないか。
ただし、米側ではホワイトハウスが「国防省に核抜きを納得させる材料」として使った蓋然性は高い。米政府部内で当時とその後にどう取り扱われてきたか、現在米としてどう考えるかを聞いてみれば、この密約の性質、効力を確定し得るが、米側に今も有効と言われる恐れが少しはあるので、藪蛇にならないように、慎重に取り運ぶ必要があろう。
●密約の存在が意味するもの
60年安保改定の際の核搭載艦船の寄港についてのいわゆる密約は、要するに米艦船が核を搭載して寄港しており、日本の政府当局者がそれを容認していた、しかし国会では事前協議要請がない以上、寄港していないとごまかし答弁をしたということである。寄港を持ち込みとして扱わなかった、という意味での非核3原則は守られていなかったということである。
CVN.jpgなお、三木総理は核搭載艦の領海通過も持ち込みにあたると述べたが、国際法上、外国船舶には無害通航権というものがある。何を持って無害とするかは航行の態様により判断されるのであって、船舶の種別により判断されることではない。三木答弁は国際法上無理な答弁であった。中露の艦船が日本の領海を核搭載のままで通過したこともあったであろう。
●現時点での問題点
この密約の調査と今後の核搭載艦船の寄港問題、非核3原則の取り扱いは、別に取り扱いたいと岡田外相は述べている。これはそうすべきであろう。
米の艦船には平時には、核兵器は1991年ブッシュ声明以降搭載されていない。したがって平時においては、今では非核3原則との矛盾は生じない
●将来の有事に向けての課題
問題は有事の場合である。これについては非核3原則を重視するか、核の傘の実効性を重視するかが問題になる。
有事と言ってもいろいろなケースがあるので、その時々に判断する、場合によっては非核3原則ではなく、核の傘の実効性を重視する余地を残しておくことが肝要であると思われる。事前協議には、イエスもノーもあるという姿勢を取っておくべきであろう。
本日はここまでとします。
明日の後編では、米国の核拡大抑止が有事に機能するか、日本は如何に対応すべきか、について茂田さんのご意見を紹介します。

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