米空軍無人機のゆくえ(後編)

AFA発行AIR FORCE Magazine12月号掲載の米空軍無人機将来計画に関する記事「Roadmap for Robotics」を紹介しています。
昨日の前編は、無人機への投資拡大、なじみの薄い小型無人機、急増する無人機運用要員の新養成法でした。本日は無人機の任務拡大と無人機運用の抱える課題について記事の概要を紹介します
●無人機任務の拡大見込み
globalhawk.jpg無人機の能力が脚光を浴びたのは、通常の調達プロセスを飛ばして飛ばして2001年に現場に投入されたグローバルホーク(GH:写真)の活躍が背景にあります。ダルフールで難民の分布を確認するのに、U-2は一回のフライト3時間で要求エリアの3%しかカバー出来なかったが、GHは20時間で58%をカバーできたそうです。
JSTARS.jpgJSTARSin.jpg「Flight Plan」が提起した将来像で、すんなり受け入れられそうな分野には、伝統的なISR任務であるシギント、電子戦やJSTARS(写真)の地上目標追尾任務が上げられています。
一方でAWACSやJSTARSが行っている指揮統制C2に関しては議論を呼ぶことになりましょう。同様に空中給油、空輸に関しても少なからず議論が起こるとおもわれます
mig-25iq.jpg防空(counter-air mission)任務に関しても「Flight Plan」は言及しています。2002年12月22日、イラク上空を監視任務で飛行していたプレデターがイラクのMIG-25(写真)に遭遇、AIM-92スティンガーを発射したが回避され、逆にMIGに撃墜された事例があります。空軍はMQ-9リーパーで構成する第42攻撃飛行隊(42th attack squadron)を既に編成しています。その他、SEADや救難にも応用が考えられている。
●無人機フライトプランの課題
前編で紹介した、無人機運用要員の確保と訓練体系を如何にするかの外にも、種々の課題に触れられています。
米国内空域を飛行する際の安全確保策は作戦運用以前の問題です。現在は基本的にパイロットが発見-回避するのが原則ですが、無人機の場合は無人機が感知-回避する必要があります。現在のTCASはトランスポンダー情報を元に判断しますが、同装置を搭載していない飛翔体も考える必要があります。
また無人機との通信も大きな課題です。民間衛星を多用するプレデター等は情報の漏洩の危機にさらされ、またKuバンド周波数を使用しているため、同周波数帯を優先使用する衛星管制より優先度が低い扱いを受けています。このため広帯域の衛星や高々度飛翔体利用案のほか、代替衛星や衛星の緊急投入能力強化が検討されています。
●無人機への心理的壁
f-22.jpg本筋とは異なりますが、記事の最後で、筆者が空軍士官学校入校予定者と話した際の様子が興味深いです。その高校生(たぶん)はF-22やF-35の話題には目を輝かせたが、無人機に話題が及ぶと、途端に話のトーンが落ち、「仕方ない」「避けられない」との消極的な反応だったとのこと・・。
更に退役空軍将軍の「無人機が有人機に取って代わることはない。戦争という死が関わる仕事には人間の手が絡まなければならない。有人と無人機の混合が必要だ」との話で締めくくっています。
(以上雑誌記事より)
「作戦及び作戦支援機が有人か無人化について、我々は自ら問いかけ、最終的に答えを出さなければならない」とのシュワルツ米空軍参謀総長の言葉が、空へのあこがれが支えてきた空軍文化の変化を求める無人機導入問題の核心を表現しているような気がしてなりません。

コメント

タイトルとURLをコピーしました