米空軍の核戦力は本当に大丈夫か

klotz_fg8.jpg2007年に誰も気づかないまま核爆弾を搭載して米国を横断した事案や台湾へICBMの先端部分を誤って輸出するなどの不祥事から明らかになり、ウィン前空軍長官とモズレー前空軍参謀総長が更迭された直接的な引き金になったわけですが、米空軍核戦力の建て直しは容易ではないようです。AFA発行Air Force Magazine 11月号の「The “Balanced” Air Force」等より
●組織面での建て直しは
080510-F-0986R-008.jpg09年8月7日、空軍の保有する核戦力(ICBM,B-52,B-2)運用部隊を一元的に束ねる新たなGlobal Strike Command(Barksdale Air Force Base, La)創設し、態勢の一新をスタートさせました。(すべての関連部隊が指揮下にはいるのは10年2月)
ただし、単純にそれだけでは終わらず、将来ビジョン、ミサイル、弾頭、試験設備といった広範にわたるケアが必要とされています。予算縮減の折りに・・・
弾頭
現在の核弾頭は15~30年以上以前に製造されたもので、その品質や威力が保証できない時期を迎えつつあります。現弾頭の品質確保と核実験を不要とすることを目的にした更新プログラム(RRWP)が準備されていますが、議会に不評で2010年度予算案から削除された状態です。
●ミサイル本体
minuteman3.jpg70年代の代物である450基の現有ミニットマンⅢ(Minuteman Ⅲ)ミサイル自体も老朽化が進んでいます。誘導装置とロケットモーター部の改修を約6000億円かけて実施し、2020年までの延命を空軍は計画していました。しかし議会は、本改修を期に2030年までの使用を求めており空軍マテリアル・コマンド司令官は「そこまでは十分な自信がもてない」と述べているところです。
●各種試験・支援施設
クロッツGSC司令官(写真上)は「空軍は長年にわたりこれら施設に十分投資してこなかった」と語り、現在の施設は「使い古され、疲弊し、骨董品状態だ」と表現しています。
●人的側面(士気・能力)
あり意味でもっとも深刻なのが本分野ですが、事件の後の調査では「核戦力運用に当たる部隊や兵士の士気は著しく低く、人事上も低い扱いを受け、核爆弾を扱う専門の兵士の離職が相次いでいた」状況だったようです。
schwa2.jpgシュワルツ空軍参謀総長は新コマンド創設の目的を明確に「核任務に携わる人達に、その働きが重要で価値があり、国家の安全に大切であり、その必要性が将来も変わらないことを再確認すること」と述べるなど問題は根深く、一朝一夕に解決できない問題であることを示しています。
●ビジョン
空軍は15年ぶりにICBMシステムのロードマップを最近作成した模様ですが、上で述べたようにロードマップが簡単に実行できるような状況に無いことが伺えます。
シュワルツ参謀総長は「我々は、率直に言えば“無視されてきた”この分野に約4000億円を投資することとした」、「仕事が終わったとは考えていない。我々の仕事は今後も続く」と継続的なフォローが必要なことを強調しています。
アフガン情勢悪化とあわせ、パキスタンの核管理がしばしば問題にされますが、米国はほかにも心配することがたくさんありそうです。

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