世界の安全保障を語る際に、イスラエルと周辺国とのもめ事が落ち着かないと先に進まない、又は土俵に乗らない口実になってしまっている、との印象を持たれることも多いでしょう。一方でその鍵を握る米オバマ政権の様子がよくわからない、との感想をお持ちの方もいらっしゃることでしょう。
そのような方には、財団法人中東調査会が年4回発行する「中東研究」の最新号No.504に収録の三上陽一氏(外務省中東1課所属)による「オバマ政権の中東和平政策」がお奨めです。
本論文では中東和平の中のパレスチナトラックを中心に見ていますが、オバマ政権の中東和平に関与する布陣を、ホワイトハウス・国務省・イスラエルロビー等々、多彩な方面から観測・分析し、中東和平全般に関与する人々や課題のポイントを整理しています。
三上氏は、オバマ政権の抱える課題のあまりの大きさから、今後に注目が必要としていますが、経験豊富な人材を要所に配置した布陣やこれまでの様子から「原則に留まり続ける頑固さと、現実に対応できるしなやかさを」現時点では認識しているようだ、一定の評価をしています。
課題として、ネタニヤフ政権の動きと西岸・ガザ地域の分離状態固定の懸念を挙げています。そしてこれに関連してエジプトの動きやシリアの関与にも注目が必要との主張がされています。
また、恐らく筆者三上氏の主張と相通じるところが有ると考えられる、元駐イスラエル米大使カーツァー氏の「十の教訓」の引用が興味深いです。(若干論文から短縮して掲載)
教訓1・・中東和平は米国の国益 2米の政策はワシントンのみで作るべき 3機会を待つだけではだめ 4エンドゲームを見据えるべき 5合意は実施されるべき、米国は関与すべき 6大統領の直接関与が必須 7経験豊富なチームと開かれた議論が必要 8国内支持が必要、政権末期ではだめ 9特使はホワイトハウスの支持を得るべし 10経済支援等は戦略観に基づくべし
噛めば噛むほど味の出るスルメのようです!
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